ヤンデル

バビロンのヤンデルのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
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・「バビロン」は聖書に登場する栄華を極めた都市であり、同時に人々のモラルが失われている酒池肉林の状態をハリウッドになぞらえたタイトルである。

・ブラッド・ピット演じるジャック・コンラッドのモデルはジョン・ギルバートであり、これまでも「雨に唄えば」や「アーティスト」の登場人物のモデルともなっている。いずれもサイレントからトーキー時代への変遷の中で苦悩する人物として描かれている。

・ジャックが雨ガッパを着て歌うシーンは「雨に唄えば」ではなく、それを模した「ハリウッド・レビュー」の1シーンで、当時実際にジョン・ギルバートも出演した。

・また、ジャックがトーキーで「I love you.」と連呼して観客に笑われてしまったエピソードもジョン・ギルバートの実話を元にしている。「ジョン・ギルバートは想像よりも声が高かったため、観客が笑ってしまった」という逸話で伝えられるが、実存する音声では特にジョンの声は高くない。やはり映画用の演技はリアルでないと違和感が強く、当時そういった演技技術がなく観客の笑いを誘ってしまったと考えられている。

・「雨に唄えば」や「アーティスト」では、主人公は歌がうまかったり、ダンスが出来たりして、トーキーの時代にも復活して活躍するストーリーになっているが、ジョン・ギルバートは実際には酒に溺れて亡くなっている。「バビロン」のジャックは実際に近い

・マーゴット・ロビー演じるネリーのモデルも当時活躍したクララ・ボウという女優。彼女も映画同様にいつでも泣ける能力を持っていたが、幼少期に精神病の母に虐待され、父にレイプされるなどの過去を思い出すことで簡単に泣けると言っていたという。

・ハリウッドは当時なにもない砂漠のようなところであったが、ニューヨークでは映画を発明したエジソンが使用権料の請求にうるさかったため、それから逃れるために西海岸で映画を作ろうとしたのが始まり。

・ハリウッド撮影所で様々な映画が音楽を鳴らしながら同時に撮られているが、当時はサイレントのみなのでお互いの撮影には影響しなかった。音楽を演奏しているのは役者の気分を高揚させるため。

・トーキー時代になってからカメラマンが閉じ込められた個室が暑すぎて死ぬシーンがあるが、これは当時のカメラが動作する音がうるさく、また、音を出さないために空調を止める必要があった。

・ルース・アドラーという女性監督もドロシー・アーズナーという実在の人物をモデルにしている。演じるオリヴィア・ハミルトンはデイミアン・チャゼル監督の妻。

・デイミアン・チャゼル監督は「セッション」「ラ・ラ・ランド」「ファーストマン」と続いていずれも芸術や夢を追うことと恋人や家族を愛することで葛藤することを描いている。

・象のフンや放尿、嘔吐など敢えて汚いものを出すことでハリウッドの汚い部分を強調しているが、「表現が下品」と拒絶する向きも多く、日米ともに賛否が両論する評価となった。

・ポール・トーマス・アンダーソンの「ブギーナイツ」が参考にされており、こちらも同様にポルノ業界の盛り上がりと落日を描いている。

・3人の登場人物の情景を行ったり来たりしながら写す手法は映画「イントレランス」を参考にしており、こちらも古代バビロンの崩壊を描いた映画でもある。
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