はつか

星の子のはつかのネタバレレビュー・内容・結末

星の子(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「親の心子知らず、子の心親知らず」というか。

未熟児として生まれアトピー性皮膚炎の子供のために購入した“水”で症状が改善したことをきっかけに新興宗教に傾倒していく親。
その両親の下、元気にすくすく育っていく未熟児だったちひろ。

小学生、中学生と成長していくちひろは、宗教や両親を否定したり拒絶したりする外界との触れ合いで、宗教団体に対して疑問に思うも確信に変えようとはしない。
親の言いつけ通り水を飲み、集会にも赴く。
ちひろは両親を「信じたい」というより「否定できなかった」んじゃないかと。
それは赤ん坊の頃の自分を助けようと必死だった両親を否定することになるから。
姉の「ちーちゃんが弱いせいでこうなったんだよ」の言葉が呪いのように付いて回っていたのかもしれない。
伯父の提案を(その意図を理解した上で)断ったのも、ちひろが宗教を「信じている」のではなく両親に対しての思いからだったのだろう。

しかしちひろが健康体になると、両親の関心は“宗教”一本になる。
10年分の成長を綴るはずだったノートはいつの頃からか記録されなくなり、ちひろの落書き帳になっていた。
さらに姉が家出し行方がわからずともさして気にしない。
親は子供を見なくなった。
集会所での幾度のすれ違い、いつまで経っても3人同時に見ることの出来ない流れ星。
どこまでもどこまでもすれ違い続ける親子の物悲しさ、そしてこの「すれ違い」こそが家族の絆だという滑稽さ。
なんとも言えない後味の残る映画だった。
はつか

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