はつか

ファーザーのはつかのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
5.0
終始舞台劇みたいだなと思って観てたけどそもそも戯曲が原作なのね。

認知症目線で描くって想像できなかったけどサイコホラーのような、観客を巻き込む演出にグイグイと引き込まれた。

訳がわからないままアンソニーと一緒に混乱させられ最後の最後にタネ明かしとばかりに彼を客観視させる展開の妙。
そのラスト5分のアンソニーホプキンスの凄まじい演技、セリフにボロボロに泣かされてしまった。

身近に認知症の人もいないし認知症がなんなのか正確に理解してないし自分や親がいずれなるかも、みたいな想像も全く出来なかった。
つまり共感や同調が出来なかったのになぜあのセリフに泣かされたのかずっと考えてて。
「私は誰なんだ」
「すべての葉を失っていくようだ」
どれだけ長く生きても人間の“つくり”は脆くて未熟で不完全で、その構造の残酷さに気付かされてしまったというか。
どの視点でモノ言ってんだって自分でも思うけど、今のところこの着地が一番しっくりきてる。

死ぬまで続く地獄を、観る者に悟らせるあの悲哀に満ちた演技はほんとに凄いよ


追記:
娘の選択を責めることはできないよなあ。
多分、前夫と離婚した原因はあの父親だと思うし。
はつか

はつか