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ジョゼと虎と魚たちのdm10foreverのレビュー・感想・評価

ジョゼと虎と魚たち(2020年製作の映画)
4.0
【輝く羽】

劇場鑑賞年間100本目で、今年最後の劇場鑑賞に選んだのがこの作品でした。
一応「年間劇場鑑賞90本以上」という今年の目標はクリアしていましたが、切りのいいところでどうせなら100本行きたいな・・・と、仕事終わりのスケジュールを確認して、辛うじてハマったのがこの作品だけでした。

たぶん、そんな事でもなければ劇場での鑑賞はスルーしていた可能性が高かったのですが・・・。

ちょっぴり泣けました。
決して号泣ではありませんが、逆にじわ~っとくる感じが自分には心地よく・・・。

以前、作画がどうにも合わないかも・・・という理由で「聲の形」の劇場鑑賞を見送った挙句、家でDVDを観てボロ泣きしたという後悔もあり、「気になるなら観よう」と自分に言い聞かせての鑑賞。

妻夫木聡×池脇千鶴で2003年に公開された実写版の方は・・・うっすら記憶にあるけど、実は殆ど覚えてない😅。
ただ、今回アニメ版を鑑賞して、ある意味「まろやか」になったというか、希望の光が感じられる物語になっていた気がしてこっちの方が好き。

実写版の方がある意味では生々しい部分もあって、「人間の存在」だとか「生きていくこと」ことみたいな根源的なテーマも含んでいるのに対して、今作では「若者の葛藤」とか「人を愛することとは」という、どちらかと言えば鑑賞する人も若い人をターゲットにしているのかな・・・とも感じた。

とはいえ、「人を愛する」ということが、必ずしも相手に尽くすことを意味しているわけではなく、自分自身をしっかりと持っていないと肝心な時に大切な人を守れないという真理を教えてくれるという意味では、全世代に共通するメッセージでもある。

それは体が不自由だから自分は強くはなれないと諦めるのではなく、愛する人が自分の元に帰ってくるとき、どんな時も笑顔で迎え入れてあげられる「心の豊かさ」。
愛する人が夢破れて自分にもたれかかってきた時、一緒に倒れるのではなく、そっと支えてあげれられる「心の強さ」。
そして、愛する人の夢に対して、何の打算も計算もなく、自分の事のように応援できる「心の清らかさ」。

ジョゼと恒夫の、不器用ながらもそこに近づいていく過程の描き方が真っすぐで、途中にエロや精神的なグロも挟まなかったので心地よい気持ちのまま観れたのも良かったのかな。

どうしても「障碍者」をテーマに描くと、知らずのうちに視点が固定され、まさに「外の世界は猛獣ばかり」という固定観念を持ってお話が進んでしまう傾向があるんだけど、今作では、あえてそれを逆手に取って、「外は敵意に満ちている。だから外には出ない。」という塞がれた視点を最初に見せてから「でも、手を伸ばさなければ何も手に入らない」と本人が一歩前に出るきっかけを与えることで、「結局私なんか・・・」という苦しい終わりには持って行かなかった。

おばあちゃんから「外の世界は猛獣ばかり」と刷り込まれ中々外に出してもらえなかったけど、恒夫と外に出かけた時、小躍りして喜ぶ姿が描かれていた。
実写版のおばあちゃんの描き方とはちょっぴり違った印象だけど、これも「自分の足で前へ出る」という事をジョゼ自身が見つけるまでは・・・っていう描き方だったんだな~と。
自分の余命を考えた時この子が生きていくためには「自分で顔を上げて前に進む」ことが出来なければ、そして、その横に「悪意に満ちた虎」ではなく、ジョゼが共に歩むことが出来る人がいてくれれば・・・。
多分、おばあちゃんはホッとしたんじゃないかな。
「自分の役目は・・・」みたいな。

裏を返せば、人間のエゴというか、そんな綺麗な人ばかりじゃないよなっていう感想も過る。
それくらい、着地点は綺麗すぎるのかもしれない。
でも、嫌いじゃないかな。
変に「あなたの事を愛しているから、私は我慢する」っていう押し付けではなく、「あなたの事を愛しているから、私も頑張れる」っていう、それぞれが胸を張って明日を迎えられる終わり方だったと思う。

ジョゼ子ちゃんはいい子だよ。
恒夫君がジョゼを支えているように見えて、本当に支えていたのはむしろジョゼの方だった。
懸念材料であった作画も、終盤は全く気にならないどころか、最後の方はむしろジョゼがめっちゃ可愛く感じたくらい。
(アニメなんてさ・・・)
もう、そんな斜に構えて見逃すのは止めよう。


月並みな言葉かもしれないけど、恋愛なんて人の数だけ形があるし、もっと言えば正解(正攻法)なんてない。出来ることと言えば、常に相手に対して真摯でいることしかない。

そして出来ないことを無理してやろうとするのではなく、自分が出来ることを精一杯やることだけなんだと思う。

「与える愛」
「耐える愛」
「求める愛」
「ただ待つ愛」

全て相手を想ってこそ成立する。
自分勝手はダメなのよ☺️


昔、先輩から「彼女が自分の全てになったら負けだぞ。お前が一本の木だとしたら、彼女が幹になるような付き合い方は止めておけ。幹はあくまでもお前自身だ。お前の好きなサッカーもバイトも友達も彼女も、みんなお前の枝葉なんだ。幹がしっかりしてなければ枝葉は簡単に枯れてしまうんだぞ」っていう言葉を言われた。

居酒屋で結構飲んだ挙句に、いつも熱い恋愛論を語りたがる先輩だったけど、何故かその先輩のことが好きでいっつも一緒に飲んでいた。
そしてその時に言われたのがその言葉だった。

もう20年以上も前の話だけど、未だに自分の「幹」にある言葉。

今作を観て、ちょっと先輩の言葉を思い出した。




あと・・・ジョゼちゃん。
似てるんだよな~。知り合いに。
実際には会ったことも話したこともないんだけど、あくまでもイメージでね。
もちろん良いイメージで。


そんな感じで今年のレビューは恐らくこれで終わりになりそうです。
一年間お付き合いいただきましてありがとうございました。
また来年もよろしくお願いいたします。
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