みきちゃ

ミス・アメリカーナのみきちゃのレビュー・感想・評価

ミス・アメリカーナ(2020年製作の映画)
5.0
米国の女性ソロアーティストにとってドキュメンタリー作品は結構大事で、キャリアのここぞというタイミングでハッキリした意図を持って発表されることが多い。2010年代のポップアイコンであるテイラーが、何が起きようが何を言われようが全ての災難と炎上ををプラスに変えて成長し続けている彼女が、いま何を伝えようとしているのかとドキドキしながら観た。

初期のテイラーは、その存在自体がまるでフェアリーテイルのプリンセスか少女マンガのヒロインかといった感じで何か異質だった。可憐な美少女が何故カントリーというジャンルを選んで出てきたのか、こんなストレートに乙女心を詰め込んだ歌を本当にこの子が自分で書いて歌ってるのか、全部が嘘みたいで全然刺さらなかった。

そのうち彼女は変化を余儀なくされることとなる。「えっ!自覚あったんだ!」と少し驚いたのが、自分は田舎から出てきたピュアで幼稚な夢見る少女だったと分かってたような発言。そのままのテイラーではいられなくなることが次々起こった。ファンじゃなくても2009年MTVアワードでのあのカニエ事件は酷く可哀相だった。彼女が何かしたわけじゃなかった。いつも良い子にしてた。ただ自分の音楽をやっていたかった。でも、予定外のことで爆発的に知名度があがって、世の中が彼女を追いかけ始めた。

世間が手のひらを反すこと。マスコミには血も涙もないこと。人には悪意があること。そういうことを少しずつ知っていったんだろう。テイラーは、書かれたい放題書かれっぱなしで翻弄されるままに終わらなかった。ド根性と高い順応力と、いずれ世間も大企業も手玉に取ってしまうくらい肝が据わった、大胆で勇気もある聡い人物であることに、彼女をデビューさせた大人たちはどこまで気付いていたんだろうか。

これまでの彼女の戦略はほとんど完璧にキマり続けている。ヘンに高すぎるプライドがなく、確かな客観性とバランス感覚があることが彼女の成功のカギのような気がする。音楽制作にもガッツリ関わってることはこの作品を見るまで知らなかった。才能やばいーー。

ハイライトはたぶん、マネジメントの反対を押し切ってついに政治的表明をする場面。あの投稿が実はこんなにおそるおそる発信されたもので、裏にたくさんの葛藤があったことを私は想像出来ていなかった。何かしら起こった出来事ありきで対応していくスタイルのテイラーなので、自発的に大事を起こすのはある意味キャリアもかけた挑戦であり、これで本当にプリンセスからの脱皮になるということがわかっていたんだろうなあ。

どんな悪評も武器に変えてしまうテイラーは、正々堂々としていて清々しい。昨年のAMAでのパフォーマンスは、自信に満ち溢れて、貫禄十分でめちゃくちゃかっこよかった。素晴らしいドキュメンタリーだった。テイラーのことずっと見ていきたい。

「I can't change what's gonna happen to me, but I can control what I write. (現実は変えられないけど、曲作りは自分次第よ)」

=====
意志が強い歌が増えてきてて、そろそろマンネリもあり得るかもと思ってたら発表された「Look What You Made Me Do」には痺れた。メディアとSNSに蔓延していた自身の悪いイメージを真正面から自虐することで、否定するでもなく、ただ跳ね返してしまったかっこよさ。
https://youtu.be/3tmd-ClpJxA

「You Need To Calm Down」
ファブファイブのお茶会可愛すぎ!LGBTQ的なのはちょっと違う気はしたものの、ケイティと遂に仲直りしてるのを見て幸せな気持ちになった。
https://youtu.be/Dkk9gvTmCXY
みきちゃ

みきちゃ