松田

ブレスレスの松田のネタバレレビュー・内容・結末

ブレスレス(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

亡き妻の幻影を見る為に偶然迷い込んだSMクラブで会ったミストレス、モナに生きる糧を見いだす主人公、ユハ。
亡き妻を見ようとするあまり、周囲の人々はおろか自分の事すら見えなくなる程、彼の人生が大きく動き出す。

全体を通して、比喩表現がかなり多く、そのどれもが自然と全く違和感なく入り込んでいる為、この作品には余計なノイズが無い。
そのおかげで夢のように映像は移り変わり、現実で時間が流れていくように物語も途切れる事なく進み続ける。

中盤からはエゴマゾだの迷惑客だの、それらを超えるレベルでユハの行動と執着が狂い出す。
そんなユハに対して折れる事なくSMクラブでの仕事を辞める事なく続け、これで最後だと言うユハの言葉に耳を傾けたのが、ミストレスとして非常に寛大な器の大きさを感じた。
さらにユハを抜歯するという純粋に人に苦痛を与える事に悦びを覚えるという部分は全く弱まる事なく、もっと言えばモナ自身のBDSMそのものへの愛を感じる展開だった。
ユハも終盤の抜歯プレイ(?)の前に「何故犬が二足歩行しているの?」と言われ素直に床に這う忠実さがいつの間にか身についていた。
あのシーンはBDSMの主従関係の持つ、非常に偏った信頼関係をよく描写していたんじゃないかと思った。

あと、全体的にユハ(M側)をメインに持ってきていたと思うが、モナ(S側)のミストレスとしての側面を完全に掘り尽くさず、謎めいた側面をある程度残した絶妙な配分が素晴らしかったと思う!

そして妻への執着、周囲の事、さらにはモナへの執着と主従関係から解放されたユハが辿り着いたラストは素直に感動した。良い意味で人生が狂ったんじゃないだろうか。
松田

松田