逆鱗

ひとくずの逆鱗のレビュー・感想・評価

ひとくず(2019年製作の映画)
4.5
今日もこの同じ空の下で、虐待を受けている子供たちがいる現実を想像できるであろうか?!

虐待は負の連鎖を生むという
虐待を受けて育った人間は親になると、我が子にも虐待をしてしまう

子供の手の甲に根性焼き、火傷を負わせるためにアイロンを熱して胸に押しつける

実の親が手を下す場合もあり、親の愛人が手を下す場合もある

マリはゴミだらけの部屋に一人、玄関は表から南京錠で鍵を掛けられて放置されている
食べるモノはとうになく、電気も止まっており、暗闇の中でバターの蓋やペットボトルに微かに残る味を舐めている
マリの手には根性焼きの跡、マリの胸にはアイロンを押し付けられた火傷の跡がある

マリの母も虐待を受けて育ち、社会性のカケラもなく、反社勢力の男に依存して生きることしかできない
マリがこの男を異様に恐れる様から、この男がマリに火傷を負わせた張本人であることがわかる

この虐待の負の連鎖を止めるのが、自身もまた虐待を受けて育ち、母親の愛人を刺し殺して少年院に収監され、大人になってからは、空き巣を生業に刑務所とシャバを行ったり来たりしている破綻者のマサオである

負と負がぶつかり合い、マサオはマリの母親の愛人である男を刺し殺し、救世主となる

確かに社会性が欠落した人間には、まともな示唆や助言は役に立たないし、中途半端な介入は余計に虐待を生むだけである

これを打破できたのは、非常識な圧倒的な負を纏うマサオだからであろう

マサオは、その後、マリとマリの母と幸せな一時を過ごすが...

別の作品作りの取材で医師にインタビューした際に、児童虐待の悲惨さを知り、気になって眠れなかった監督は、一晩で本作の脚本を書き上げた
かかる医師は言う「一人でも多くの人が児童虐待に注目することで、救われる命がある」と
非常にメッセージ性が強く、かつ映画としてもサイコーの作品であった

追記
エンディング曲のHITOKUZU が良曲過ぎる、泣ける!
この作品、海外映画賞複数受賞しているのに、上映館少ないし、もったいない
埼玉県から吉祥寺まで、この映画のためだけに行った甲斐があり過ぎた
逆鱗

逆鱗