Hoshi

プロミシング・ヤング・ウーマンのHoshiのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

やばいね。

強烈な光の当て方のMeToo映画。
男性はこれ見て気分悪い気持ちを抱くと思うけど、抱いてほしい。全ての人がこんなわけないのはもちろん分かってるけど、女も男もみんな、同じ生き物が自分達の中に紛れ込んでる事実を知ればいい。女もだよ。
投じてる一石がデカ過ぎアク強すぎ、でもみた経験を手に入れておくのがいいと思う。
挙式前夜とか設定は確かにアメリカだけどさ、日本の高偏差値私大を中心に、バリバリきくよね?こういう事件。だから他人事なんかじゃないんだよ。


(以下は本当に滔々と書いてます)
滑稽で余計に気分悪くなるのは、話の発端が起きたのは高偏差値の成功者の卵の世界で、女も加担していること。

性被害だけはなぜか被害者が悪く言われる謎。痴漢も、短いスカート履いてるのが悪いとかいう意味わからん反撃聞くけど、殺された人に部屋の鍵開けてたのが悪いって、その人の墓の前で言うのか?
自己防衛はもちろん大切だけど、あくまで加害する方がおかしいんだよ。

キャシーの母も愚かで悲しい、時代が女性に求めた知性の度量がうかがえる。
ある年齢から、親を喜ばせる方法が結婚と出産でしかなくなる不思議。男性も一時は結婚と出世しかなかったんじゃないかしら。性的観点からの社会の縛りって…まあもともと我々生き物だからね、壮大なゴールは子孫繁栄だからさ…でも…ねえ。学校いた頃は彼氏なんて聞けば苦い顔されて、成績いいと褒められるのに、なんで30過ぎたら勉強頑張ってても憐れむ顔されるんだろうね…?(もちろんこれも全てではないと思うけどさあ)

キャシーが途中で一度反撃の手を止めて、自分の幸せを見つめ出した時のパパが、キャシーの全てを理解してたと知って感無量、涙出た。男だからみんなダメとか、そういうことじゃないのよ。ライアンもそう、本気の子にどこまでも紳士でいようとする。まあ、本気の子には、ね。
結局彼女の心の奥底までは辿り着けなかったし、自分の身が危うくなれば簡単に彼女にクソをつけて呼べる。この映画は、傍観者たちの罪の重さもきちんと教えてくれる。

捜査が始まっても、証言はみんな男で、ママの言った言葉さえも刑事がライアンのところを訪ねるときにはもう父の発言として引用されていて。ああ、言葉は男たちで紡がれる、これが世の中なんだな、っていう皮肉を受け取った。

キャシーもまあだいぶ壊れていたのだと思う。最後のニーナに対する崇拝のスピーチは彼女の強すぎる行動の動機をよく説明していたし、反撃の数々は、我が身を顧みない高リスクばかりで、これはニーナを守れなかったことを許せないことからくる自傷行為でもあるんだと思った。
IやIIにも考える体験(強烈すぎるけど)を与えてはいたけど、自分は奴らと同じにはならない、というプライドがあったから、一線を越えることはしなかったのかな。
頭の良さだけは錆びついていなかったから、リベンジのプロセスが胸スカだったよね。でもさ、悔しいけど、どこまでいっても男の腕力には勝てないんだよ…

とりあえずジョーが1番卑怯。何の責任ももたないくせにうまいこと近くにいる。無責任なアドバイスばっかり。分が悪くなると消える。
アルの結婚式も現代の潮流に乗っておしゃれで平和に理解ありますよアピールがあるけど君はいつまでも古い世界の人間だよっていう対比のあざけりがやばい。

ライアンとうまくいっているときは、正直観ていて複雑な気持ち。男性のオスの部分とそれが生み出したいびつな社会を憎んでいるけど、やっぱり心満たしてくれるのは恋人なのか、と。(全然満たされてなかったんだけどね。。)

ローマ数字の4がおかしいな?と思ったあとの5は、映画の演出としてのワクワクがすごかった。あー、その4かー!!!って。わたしはクソ真面目だから受け取り方が下手で、面白いって言っていいのかわからなくなっちゃうんだよ、テーマが社会的で真面目なのに、セリフやファッションや構図や皮肉がおしゃれでうまくて面白いんだよ…!

こういう映画や情報に触れるたび、自分が異性への警戒心を変なふうに強くしてる気がして、男がみんな悪みたいなメッセージなわけじゃないのに、愚かな理解の仕方をしてないか不安になる。自分は自分で強くなりたい。

主人公が死ぬ映画は久々だったわ…
Hoshi

Hoshi