NM

プロミシング・ヤング・ウーマンのNMのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

女性も社会進出を果たした。しかし女性を見下す男性は多い。このヒロインも職場でもナイトクラブでも道端でも男からのいわれなき野次が飛んでくる。
そして敵は男性だけでなくそれにおもねる同性にも多い。
多くの人が過去の悪事を、大したことないこと、子どもがしたこと、忘れた、と自分を正当化して生きている。そして時が経っても反省していない。


この女性キャシーもスーツを着ているが、ナイトクラブで泥酔している。目をつけた男が家に連れ帰り服を脱がせようとしたところ、彼女は目をぱっちり開けて起き上がりはっきりとした口調で話しだした。
どうもこのクラブで泥酔したふりをして男を誘っては懲らしめているらしいが、何か特別な目的があるらしい。
家では無数の男性の名を書き並べたメモ。
そして友達らしきニーナという女性との古いツーショットがあり、何やら語りかけている。
一体このキャシーという女性は何を抱えているのか。

キャシーの両親は不安そう。一人娘で愛しているが、いかんせんこの時代。キャシーのスーツはただの変装だったようで、医大を中退し実家暮らしで30歳、一応カフェで働いているが友人も恋人もいない。それにいつも帰りは遅い。

ある日医大時代の同級生ライアンが偶然キャシーのいるカフェに寄り、デートに誘った。足蹴にされたが、当時から好きだったので友達でいいからと食い下がった。優しくとても真面目そうな男性。
二人は時々会うように。この出会いが運命を変える。

ライアンは医師なので、医大時代の友人とは付き合いが続いているという。
彼の口からマディソンという同級生の話題が出た。彼女は出産し子育てにかかりきりだという。ライアンは、君とマディソンともう一人の女子と仲が良かったよねと話題に出した。覚えていないとしらを切るキャシー。
そして、アルは麻酔科医で今度モデルと結婚するよ、とも。
表情が固まるキャシー。

キャシーはFBのようなサイトで二人の近況を確認。
当時の友人の一人マディソンに連絡し、二人で食事に行った。

久しぶりねと盛り上がりボトルを数本開けたあと、キャシーの目がまた豹変。
「あの事件」について問いただした。マディソンは何やら慌てだし逆ギレ。私は悪くない、あの女は誰と寝る、オオカミ少年よと。
マディソンを置いて今日は帰るわねと席を立ったキャシー。そして別の席にいた男に封筒を渡した。
次の日マディソンから留守電が入る。昨日あのあと私はどうなったのだろうか、酔っていて記憶がない、不安だから連絡がほしいとうろたえている。キャシーは留守電を放置。

続いて会いに向かったのは医大の学長。当時から勤務しているらしい。
復学志望と嘘をついてアポを取り二人で面会。
アルのことを覚えているか、彼が部屋に連れ込み酔わせ友人たちの前で何度も暴行した件は?と問う。
学長は、その女性も告発も覚えていないが、証拠がない、疑いだけで未来ある男性の可能性を潰すわけにはいかない、と彼女が悪いかのように答える。彼女の身体には手の跡のアザがいくつもあったのに。
この学長もまた当時と変わっていないらしい。
そこでキャシーは、ところで3時間前に娘さんを男の部屋に送っておきました、部屋には酒があったけど楽しむでしょう、と話す。
学長は興奮の末、謝罪し娘の居場所を教えるよう涙ぐんだ。それは嘘で娘は無事。

続いて訪れた元弁護士グリーンの自宅。アルの弁護を担当した。勝訴したり告訴を取り下げさせれば報酬が上がったことを告白。
現在彼は自責の念で仕事はできず夜も眠れず、キャシーに許してくれと膝まづいた。
初めて悔いる人間に会ったキャシー。涙が頬を伝う。
待たせておいた男には、金を渡しそのまま帰らせた。
きっと少しは眠れるようになるだろう。

ニーナの母親に会った。
すると、もう自分を責めないで前に進んで、と進言された。

アルのバチェラーパーティーの情報を削除し、懲らしめた男名簿も捨て、ルーティンだったクラブでの懲らしめを辞めて、ライアンときちんと付き合うようになった。
家に招き両親とも食事をした。
食事のあと父は二人きりになると、頑張ったな、ニーナのことは悲しかった、お前が戻ってきてくれて嬉しい、と語った。父は理解して信頼しずっと見守っていたようだ。

マディソンが家にやって来た。あの食事の日泥酔して気づくとホテルに見知らぬ男がいたので、自分が何かをされたのかと恐怖したようだ。
そして、この動画を置いていくからもう二度と連絡しないでと言い残し帰った。
意を決したキャシーが動画を見てみると、最もショックだったのはあの日現場を撮っていたのがライアンだったこと。ライアンは自分から撮影を始めた様子で笑いながら行為を見ている。泣き崩れるキャシー。

ライアンの職場に向かい動画を見せて脅すと、覚えてない、ガキだったから、クソ女、と言い捨てた。彼もまた変わっていない一人だった。キャシーはアルのバチェラー・パーティーの場所を聞き出した。

森の中のキャビンで大騒ぎしている男たち。
キャシーがコスプレして向かうと全員がストリッパーだと思い込んだ。
アルは呼んでないし彼女に悪いと困り顔。過去を忘れ本気で自分はいいやつだと本気で思いこんでいるようだ。
ベッドの誘いも断ったが、キャシーは二人きりの部屋でアルを拘束することに成功。他の友人全員はキャシーが昏睡させておいた。
名前を聞かれニーナと名乗るとやっと思い出し動揺、言い訳したが動画があると知ると何でもやるからと子どものように泣き出した。

ニーナはそれまで成績も優秀で確固たる自分を持っていたが中退し、キャシーも付き添って夢を諦めたが、やがてニーナは死を選んでしまったらしい。プロミシングヤングウーマン(将来が約束されている女性)とはニーナのこと。

全力で暴れたアルは片手の拘束を外し、その手でキャシーの顔に全力で枕を押しつけた。泣きながらも完全に呼吸が止まったかぐいぐいと押しつけ確認するアル。

翌朝友人が部屋を訪れるとまだ泣いていた。
死んでるんだよ、分からない、彼女に捨てられる、と。
そして友人はこれは事故だ、と言い聞かせ、アルもそうだと同意した。
二人で遺体を燃やした。まだ泣いている。

失踪したキャシーを探してライアンのもとへ一応警察が来たが全く疑っていないので、知らないとしらを切るとあっけなく帰った。

アルの結婚式。みんな幸せいっぱいで花と笑顔に溢れている。
そこへ次々と駆けつけるパトカー。キャシーはある仕掛けを残していたのだった。


父親の思いが切なかった。優しい娘の心情を理解し、ひたすら見守ってきた。
そして二度も絶望を味わったヒロインも悲劇的。優しい人格だが、この世界で生きていくには優しすぎたようだ。
身近な友人を死に追いやったやつらは社会で成功し家庭まで築いているが、自分は日々似たような男どもで鬱憤を晴らしても自分をすり減らすだけ。全ては友人のためだったのか、或いは自分のためだったのか、際どいところ。
男女の力の差がメインテーマではあるが、それ以上に人間の過去との向き合い方について印象的だった。

人は自分のした都合の悪いことを忘れ、他の人のせいや若さのせいにして自分は幸せになっていい人間だと思っているが、それは傲慢であることも。
一方キャシーはあの日彼女を一人きりにしたことを悔いているが、悪いのは明らかにキャシーではない。
真っ当に反省していたあの彼だけがこの作品の救い。
セカンドレイプもさることながらそもそも死者に鞭打つのは問答無用で品性が低い。
NM

NM