Boss2054

ナショナル・シアター・ライヴ 2020 「プレゼント・ラフター」のBoss2054のレビュー・感想・評価

4.8
私、初のオンライン試写会で拝見。
160分の長丁場だったが、難なく完走。
さて、久しぶりのナショナルシアターライブ。
今までは映画館の巨大なスクリーンでの鑑賞だったので、15インチのパソコンの画面でどれほどの感動が得られるのかとかなり心配したが、杞憂に終わった。
作品の力だろう。

90年も前の作品だそうだが、全くそんなコトを感じさせない。
知らなければ、まさに現代劇トして鑑賞しただろう。
作品の持つ普遍性か脚色の力か⁇
例えば、同様に日本の90年前の戯曲を脚色の力を借りたとしてもコレだけの現代劇として蘇らせるコトが出来るだろうか?
英国演劇界の奥深さを感じる❣️

遂先日、作者ノエル・カワード出演の
バニー・レークは行方不明ト云う映画作品を偶然観た。
コレも60年前の作品だったが全く古さを感じさせなかった。
ちなみにこちらの作品の主演は、
あの、ローレンス・オリビエ❣️
英国演劇界の巨匠である。

さてコチラのお話は、その当時の英国演劇界のスターのお話。
私が興味深かったのは、作中に登場する作家志望の青年と主人公とのやり取り。
この当時から英国演劇界には、商業演劇と前衛演劇があるらしく、
青年は主人公と商業演劇界を厳しく非難する。
対して、主人公は、青年の稚拙な前衛的戯曲と前衛演劇を激しく非難するのだが、
果たして、作者ノエル・カワードさんはどちらの立場の人であったのだろうか⁇
コノ作品を観る限り、
商業演劇的でありながらもかなり過激な作品である。
だとすると商業演劇的でありながら、前衛的でもある作品を狙っていたのだろうか?
やたらチェーホフに言及するのもその辺りの意味があるのかも知れない。

お話は、酔った主人公が若い女の子を事務所兼自宅に泊めてしまった翌朝から始まるのだが、
実はコノ何気なく思える設定が後々実に効果を発揮する。
気が付いた時には、
ノエル・カワードの巧さに見事に乗せられている。
何気ないト思っていた設定が後々全部効いて来るのだ❣️
実に巧みなホンである。

そして何より、主人公を始めとする役者たちの達者なコト。
役者ト云う仕事が実にエネルギッシュで体力を使う仕事であるコトがよく分かる。
それほど全員が全力で演じている❣️
観ていて清々しい❣️

逆に知的で繊細な部分も見事に演じている。
英国演劇人の演技力の凄さを感じる。

登場人物の人間関係の複雑さがそのまま作品の面白さに繋がっているので、
その辺りを楽しめれば良いのではないだろうか?

最後に、
何より観客の素晴らしさである。
英国演劇界の観客は、クリエイター同様に実にレベルが高い❣️
全員が見巧者である。
故に、クリエイターサイドのレベルも自然に上がるのであろう?
良い意味でのイタチごっこ。
憧れでもある。
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