このレビューはネタバレを含みます
【人権】
実話に基づくお話。舞台はパリ。そして移民問題。多いね、近年。
インド系(と括って良いのかどうか?)の移民の話では、英国映画『カセットテープ・ダイアリーズ Blinded by the Light』もネパール人移民の主人公がボスの音楽に勇気をもらい鬱屈とした青春時代に希望を見いだしていく内容だった。『ボヘミアンラプソディー』もフレディが「パキ野郎!」ってバカにされるシーンもあったっけ。
本作の主人公ファヒム少年は、チェスの才覚を発揮、大会で優勝することで、滞在許可を得ていくというサクセスストーリー。
才能があれば人権を認められ、一芸に秀でていなければ滞在許可が得られないというだけでは、昨今の難民問題の解決は見出せない話ではあるのだけど、こうして活路を開いた人もいたという一縷の望みにはなるのかな。
ただ、息子ファヒムをチェスクラブに通わせ、学校にも行かせることに腐心するあまり、真っ当な職に就かず(就けず)、フランス語も学ぼうとしない人が良いだけの父親は、ちょっといかがなものか、とも思ったが、それも現状であるということか。
難民の多い国だからか、ファヒム親子が路頭に迷っていたらすかさず保護施設に匿ってくれる組織的なボランティアが登場するあたりが我が国とは違うなと思った。
また一方で、これも次々押し寄せる難民の数の多さ故だろう、難民申請の受付センターで、(おそらく)インド系の通訳がデタラメな逐語訳をして申請の邪魔をするシーンが描かれる。バングラデシュからの難民のファヒム一家、このあたりは滞在許可される数にも限りがあり、申請を通すのならインドからの難民を多く通し、ネパールやパキスタンなど他の国からの難民申請は疎外しようとする圧力かなにかなのか。さもありなんな興味深いシーンだった。
・
・
(ネタバレ含む)
・
・
チェスといえばロシア(と思ってしまうが)、ファヒム導くクラブの講師をジェラール・ドパルデューが演じているところが妙に納得。
フランス政府が高額所得者に75%もの税金を課そうとしたことに反発し、プーチン大統領と親交があったことからロシアへ亡命した(ロシアの所得税は累進でなく一律13%なので)。それが、ちょうど我が家がロシアに居た2013年のことだったので印象深い。ムッシュのこのニュースを知った時も、思い出していたのが1990年の『グリーン・カード』。ムッシュは、移民問題の話題によく似合う?(笑)
大団円となる結末。その決め台詞を、首相への訴えとしてチェスクラブの経営者のマチルド(イザベル・ナンティ)が放つ。
「この国(=フランス)は、人権の国ですか? それとも人権を宣言しただけの国ですか?」
印象的な良いセリフだった。