ユーライ

一度も撃ってませんのユーライのレビュー・感想・評価

一度も撃ってません(2020年製作の映画)
4.7
“かわいい”俳優石橋蓮司の面目躍如。昭和老人の嫌らしさから逃げずに無頼が困難となった現代にハードボイルドを再演する。阪本監督のシーンごとに適切な演出を施す手際の鮮やかさと滲み出る情感はやはり屈指。脚本・丸山昇一としては『ヨコハマBJブルース』か、キャストはタイトルが似ている『われに撃つ用意あり』『いつかギラギラする日』といったかつて存在した熱き何かが過ぎ去った後の残滓を辿って辿って何が残るのかを確認する映画の系譜でもある、優作との『蘇える金狼』『野獣死すべし』で示された「青春の敗北」は老人へのあくまで優しみを持った視点で肯定される。令和ニッポンにガチの殺し屋ギルドがある無理筋を正々堂々やってくれる嬉しさ、オープニングの意表を突く乾きが妻夫木によるものというロマン、トヨエツのニセ中国人もめちゃ良くてあんな感じの恰幅が良くて丸刈りのコワモテをやれるんだと驚いた。メキシカン・スタンドオフを虚仮にしてみせる、三池が行ったそれとは違い動作と時間経過の滑稽さで持っておかしみを作る。「嬢ちゃん、手が震えてるぜ」への心地よい意趣返しだろうよ!
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