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罪と女王のesのレビュー・感想・評価

罪と女王(2019年製作の映画)
4.1
曖昧になりがちな女性加害の未成年に対する性犯罪を、愛情で曖昧に濁さず冷酷に描き出す事で問題視させて、被害者が加害者になり得る悪循環についても言及した作品。

無駄なシーン、台詞、描写が一切無い。必要な情報のヒントがあらゆるシーンに散りばめられている簡潔かつ洗練された演出。
少しずつ与えられるキャラクター像や環境を知る為のヒントを辿っていくと「この生い立ち・性格の人間がこんな状況でいれば、こういう行動をしても不思議はない」と思える説得力が得られる。

原題の"Dronningen" は「女王」という意味。作中で双子に『不思議の国のアリス』を読み聞かせるシーン(ハートのキーホルダーも連想アイテムかもしれない)があるので、恐らく英題のようにハートの女王を連想させている。
主人公は双子の少女の母であり、未成年の被害者の案件を専門に行う弁護士。
正義感のある弁護士として用いていた言葉を、罪を誤魔化すために悪用するシーンが印象的だった。
子供を守るべき立場にある人間が、パイを盗んだトランプ兵を糾弾する女王の如く恐ろしい存在へと変化する。

深くは語られないが、初体験の話、「辛い生い立ちを乗り越えて成功した」という同僚の言葉、支配的な性行為に対する反応を見る限り、彼女自身も未成年の時に性被害者となった事が窺える。

被害者であった事を示唆しながらも、観客が彼女に同情する余地を与えない作り。これは、この手の作品を作る上で必要な作業だと思う。
福祉大国デンマークで守られない子供達。そして被害者が加害者になる可能性にまで触れた秀作だった。
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