ベルベー

ミナリのベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

ミナリ(2020年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

プランBぽい映画だなと思った笑。とても私小説的な内容。なかなか自分事として考えられないジャンルの作品でしたが。

レーガン時代だから35年くらい前の話になるのかな。男の子の視点がメインに据えられているから、監督が子供の頃の実体験ほぼそのままなのかも。この時代に韓国からアメリカに移住した一家のお話。

農業を営むことの大変さ、旧態依然とした家長として振る舞う夫、村社会らしいのが垣間見える韓国人同士のネットワーク、そして宗教。その全部を理解できたとはとても言えないのですが。でもそういうしんどさ一つ一つをうっすらと感じ取ることはできて。それが積み重なって疲弊していく一家に感情移入することは容易かった。

とはいえ上記の要素は、個人的にはちょっと遠い世界の話で。そんな自分でも祖母と孫の交流にはグッと来た。おばあちゃん子だったもので。祖母がなかなかファンキーな人っていうのがとても良いよね笑。「フェアウェル」もそんなことを思った。アジアの封建的な社会。前時代的で悪いことが沢山あるんだけど、でもそこで生きてきた人々を全否定できるのか?そんな時代にだって家族への愛は確かにあったよね。祖母という存在はそのアイコンになり得るのかなと思った。

てなわけで個人的に心に残ったのはデヴィッド役のアラン・キム君とおばあちゃん役のユン・ヨジュンの掛け合い。めっちゃ可愛いんだけどクソガキなのがまた可愛かった笑。あれを笑って許してくれるおばあちゃん大事にしろよデヴィッド。ユン・ジョユンで印象的だったのは「匂い」を感じさせたこと。「パラサイト」もそうだったけど、匂いの表現が韓国のクリエイターは上手い…というより、そこの重要性を意識している。

オスカーノミネートのスティーヴン・ユァンも良かった。基本的に静かなトーンで笑いもあるよ、って作品だからこれ見よがしではないんだけど、このお父さん終盤まで良いところ一個もないからね笑。俺が俺がで家族のこともポールのことも下に見てるし、誰とも馴染めない(教会のシーンとか、さりげなくそれを示してる)。終いには奥さんに愛想尽かされるんだけど、でも極限の極限まで追い詰められた時に彼が咄嗟に取った行動は…。これで皆良い人でしたチャンチャンとは思わないけど、でもこういう考えるより先の行動が家族を繋ぎ止めたりするよなあと。逆も然り。そんなお父さんを、嫌な奴だけど憎めないというギリギリのラインの演技で見せてくれた。ちょっとした視線とか、鼻で笑う感じとか本当にイラッとする笑。

しかしこの監督が「君の名は。」をどう仕立てるのだろう。本作の精神性と「君の名は。」が通じるのでは?というのは面白い発想だと思う。しかし「君の名は。」が評価された最大の理由である演出技法が、「ミナリ」とは真逆な気がしていて。綺麗な映像!可愛いキャラ!隕石ドーン!RADWIMPSジャーン!と、ひたすらデコる作戦だったからな「君の名は。」。一体どうなるのか。興味深くはあります。
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