水俣病。子供の頃テレビの報道で何度となく目にしていた公害被害。
そんな患者さんたちの痛々しい姿に子供だった私は、悲しさよりも先に強い恐怖を感じた記憶がある。
ラストカットにもなっていたユージン・スミス氏撮影による「入浴する智子と母」。
有名なこの写真にもずっと、辛くて怖いという同様の感情を持っていた。
けど、映画のこのシーンを観ながら
自然と涙が溢れ出ていた。
それは怒りでも悲しみの感情からじゃない。
愛しい我が子をやさしく抱きしめる母親。
怖さなんて微塵も感じることはなかった。
悲しみじゃなく愛。
それが私の心に溢れました。
ひと作品観ただけで、この一枚の写真に対する自分の感情が180度変わった。
それだけでもこの映画を観て良かったと思う。
そしてメディアの発信力が、時に弱者の大きな力になり平和への糸道を導き出すきっかけになるという事、改めて感じた良作でした。