きよ

MINAMATAーミナマターのきよのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.0
作中での「写真は撮るものの魂をも奪う」という言葉が印象的だ。彼の写真は単に病の悲劇をセンセーショナルに映すだけでなく、そこにある暮らしや人々の心情までも表現していた。悲惨な現状と人間味を帯びた温かさが共存するような彼の作風は、この映画の世界観と調和するようだった。
ユージン・スミスのヒューマンドラマとしては申し分ないと思う。

ただ「水俣病を後世に伝える」という側面においては生易しすぎるという印象。ドキュメンタリーではなく映画なので、これが限界なのかも。作中ではほとんどチッソだけが悪役として描かれていたけれど、実際はもっと複雑で、多くの利害関係があった。調べれば調べるほど、胸糞悪くなる。

エンディングでの「公害病は過去の悲劇ではない」というメッセージは良かった。今もなお、水俣病を含む、公害病と闘っている人がいるということ、そして私達は何度も何度も人災を繰り返していることを自覚した。今、もしくは近い未来で、もし同じような悲劇が繰り返された時、私は違和感を抱くことができるのだろうか。
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