あしたか

死霊館 悪魔のせいなら、無罪。のあしたかのレビュー・感想・評価

4.0
死霊館フランチャイズの作品にして、久々のスピンオフでないナンバリングタイトル(死霊館エンフィールド事件の続編)である。
監督がジェームズ・ワンではなくなったので心配だったが、このシリーズの伝統である「圧倒的な怖さ/アクション要素/熱い人間ドラマ」をある程度は引き継いでいる。
前2作のように絶賛できるほどではないが、一つのホラー作品として見れば充分な面白さを有している。

ナンバリングタイトルなのでウォーレン夫妻メインの物語となる。過去2作以上にウォーレン夫妻の絆を描いた物語となっており、2人の馴れ初めの話なんかも出てくる。
過去2作では夫妻とゲストキャラクターとの絆で泣かせてくるような物語だったが、今回は2人の内面に集中しているのが違いか。
そのせいかは分からないが、終盤の感動が過去2作と比べて弱いのは少しだけ残念だ(過去2作が奇跡的な熱さを有していたというのはあるが)。
もしジェームズ・ワンなら悪魔に取り憑かれた青年とその婚約者との間に何かしらの感動的なエピソードを足していたのではないか。
凡百のホラー映画と比べれば人間ドラマは面白い部類ではあると思う。

ホラー演出は相変わらず丁寧で安心して(ホラー映画にこの表現は不適切?)見ることができる。
ジェームズ・ワン監督の演出を知る身としてはやや物足りなさを感じないでもないが、及第点ではあろう。

今作の最大の特徴はミステリ仕立てになっていることである。
悪魔に取り憑かれて殺人を犯してしまった青年を助けるために、ウォーレン夫妻は悪魔の存在を証明するために奔走する。
妻・ロレインの"霊視"能力を駆使して、様々な場所で情報を引き出していく。なぜ悪魔が現れたか?などの謎を一つ一つ解明していき、点と点が繋がり線となっていく展開は立派なミステリである。

悪魔が引き起こす霊的現象との戦い以外にもこのようなミステリ要素があるため、ナンバリングタイトルの中では変化球とも言える作風となっている。恐らく、多くの人が驚けるストーリーになっていると思う。

ナンバリングタイトルとして期待を背負った本作ではあったが、(前2作が傑作すぎたために)少しの残念感はありつつも手堅く作られた良作だと思う。
願わくば、ジェームズ・ワン監督が撮る死霊館を今一度見てみたい。
あしたか

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