ハル

泣く子はいねぇがのハルのレビュー・感想・評価

泣く子はいねぇが(2020年製作の映画)
3.9
主体性のない男の物語。

何をするにも自分で考えて行動せず、他人に選択を委ねているため、常に行き当たりばったり。

自分と関係する多くの人に愛想を尽かされ東京に逃げるが、結局なんの目的も見いだせずまた地元の秋田に逃げ帰る。

そんな無責任な行動を繰り返しているうち、周りから誰もがいなくなっていく。
救いだったのは親友の志波亮介がいつも近くにいてくれた事だけ。

エンディング後、思い返してみるとタスクとコトネのシーンばかりが心に刻まれていた。

それほど、この映画における二人の時間は重苦しく『綺麗事』じゃない男女のシビアさを感じさせる。

コトネの言葉に対してタスクは最悪の返答ばかりをチョイスしていく。

端から見ると酷い有様。
しかし、自身が当事者だとすれば、男がついついやってしまう行為にも思えて、一概に非難もできず、少なからず理解できてしまう部分も多々存在する。

また、主演の仲野太賀の演技はもちろん、今作の吉岡里帆は出番こそ多くないものの、一つ一つの演技で魅せる表情が秀逸。

少ない言葉でタスクに伝える度、お互いの間にある空気を凍らせ『決別』を強く意識させるようなそんな想いをセリフではなく、表情一つで表現していたからだ。

敢えてゆっくり話す事で今置かれている立場、深刻さを未だその意味に気付けていない主人公へ伝えていたのだろう。

そして、キャスト、スタッフがそこから逆算して作り込んだというラストシーンに関しては受け取り側によって解釈が分かれるのかな、と。

謝罪、後悔、応援、どの様にも捉えられる一方で、どうしようもない気持ちを最後にぶつけたかったのでは?とシンプルに捉えることも出来そう。

最後に今作で少しだけ疑問点を感じたのは、秋田の伝統文化であるなまはげをフォーカスする意味だ。
タイトル含め主題だが、そこまで必要だっただろうか。最後のシーンで必要とはいえ、作品を全体として捉えた時には代替え可能であり、タスクの人間としての未成熟性をメインテーマとして存在させれば関連性を持たせる意味はなかったようにも感じてしまった。
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