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トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャングのKnightsofOdessaのネタバレレビュー・内容・結末

1.5

このレビューはネタバレを含みます

[とある義賊の伝説解体] 20点

世界初の長編映画と言われているのが1906年に発表されたチャールズ・テイトによるオーストラリア映画『The Story of the Kelly Gang』である。現在は20分ほどの断片のみが現存しているが、全長は90分ほどあったと言われている。両作品の主人公ネッド・ケリーはそれほどまでにオーストラリアでは人気の高い人物なのだ。彼は流刑地だったオーストラリアがゴールドラッシュに湧き始め、植民地として形を成し始めた頃に、貧農一家に生まれた。為政者や囚人以外の植民者が続々と上陸する中、元囚人たちの子孫は警察官たちに執拗な疑いの目を向けられていた。それこそジェニファー・ケント『ナイチンゲール』の世界である。事あるごとに難癖をつけてケリー一家を挑発する警察官から逃れてハリー・パワーという山賊に預けられたネッドは、腐敗した警察組織への反感を抱えたまま成長する。

映画は後にオーストラリアのロビンフッドとなる義賊の出自は?そうなった所以は?という疑問について順を追って説明をしながら、娘に向けた手紙という形でネッドの人生を忠実にたどり直す。義賊としての逸話や伝説ではなく人間的な一面を掘り下げるため、敢えて強盗シーンなどはほとんど描いていない。元々のコンセプトとして"あんだけ神格化されているネッド・ケリーだけど…"から始まってるっぽいのでそこらへんは映画の外で仕入れてきてくれということなんだろうが、これが全体的な火力不足の原因と思われる。

有名な最期の撃ち合いシーンは、極限に置かれた人間がトランス状態になって中を乱れ撃ちしていくような幻想的でサイケデリックな映像として再構築される。ここだけ急に現代っぽくなって、『The Story of the Kelly Gang』でも登場したブリキのバケツみたいな兜を被って突進していく姿は、『明日に向って撃て!』のラストに想像を付け加えた感じになってて寧ろ良い。

トーマサイン・マッケンジーが出てきて驚いた。彼女の作品で未だ当たりという当たりを『足跡はかき消して』くらいしか引けてないのが残念だ。
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