ノラネコの呑んで観るシネマ

モロッコ、彼女たちの朝のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

モロッコ、彼女たちの朝(2019年製作の映画)
4.3
娘と二人でパン屋を営むアブラは、ある日仕事を探すホームレスの妊婦サミアと出会い、見捨てることが出来ず家に泊めることにする。
マリヤム・トゥザニ監督はリアリティたっぷりに、女だけの家を描く。
時間が進む毎に、彼女たちが抱える問題も変わってゆく。
序盤は助けを必要とするサミアを、アブラが受け入れるまで。
中盤になると、今度は立場が逆転してくるのが面白い。
アブラは夫の事故死以来、心を半分閉ざしているのだが、サミアがメンターの様になって彼女の心を開いてゆく。
そして終盤の問題は、サミアの出産。
未婚の母がタブー視され、私生児は一生差別される社会。
初めから養子に出すこと決めているサミアが、子供に情が移らない様に、抱くことを必死に耐える姿に心が痛い。
ついつい日本の感覚で色んな解決法を考えてしまうが、彼女たちの選択肢が遥かに少ないのは想像できる。
モロッコは世俗的とは言っても、アラブ社会での女性の生きづらさは十分伝わってくる。
優しくも、ビターな後味が印象的。
ところで劇中に出てくる、”ルジザ”という、パスタみたいに細く伸ばした小麦粉で作るパンが美味しそうなんだが、日本で売ってるところは無いんだろうか。
見た目からは食感が全く想像できない。