レオピン

息子の面影のレオピンのレビュー・感想・評価

息子の面影(2020年製作の映画)
3.7
どうして移民が増え続けているのか。中南米からの移民の群れが続々とメキシコを経由してUSへの入国を果たそうとしているが、そこに至るまでの道筋、その理由とは一体。。

こんなすごい事になっているのか。
到底同じ時代に生きているとは思えないというのが正直な感想。

中東もそうだが、つくづく世界は時間軸が壊れているんじゃないかと思う。古代と中世、また近代が緯度と経度をズラしただけでそれぞれの地域で同居している。野蛮はISだけじゃない。

この作品には剥き出しの暴力が転がっていた。登場人物は茂みから様子を伺い、息を潜め隙を見て走り抜ける。まるでゾンビ映画のような動きだが相手は素面の人間だ。

暴力はアメリカを強制退去され国に戻ってきた人たちへも向く。帰ってきた同胞に対する仕打ち。あいつはもう人間じゃない、だから何をやってもいいんだという報復感情なのか。とにかく容赦がない。

ゆっくりと歩きながらアメリカの入管を出ていく男の背中にカメラがはりついている。あの緊張感。ここを出たらもう地獄。襲われたバスの生存者の話もまるで戦争の生存者へのインタビューのような生々しさがあった。
無法地帯のリアルがドキュメンタリータッチであぶりだされていて、異様な緊張感が続く。

犯罪組織が若者を次々とリクルーティングしている実態も既に『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』なんかで描かれてはいた。彼らに選択肢は存在しない。あるとすれば死ぬか(誰かを)殺すかだけ。

劇中に出てきた悪魔の幻視も。いやあれは幻ではない。あれはたぶん実際にあそこにいるのだ。本当の「悪魔を見た」。

もはや、今更トランプ政権の移民政策を声高に批判したって何にもならない。絶望。無力感。完全にHPゼロの状態で劇場をあとにした。
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