スガシュウヘイ

MOTHER マザーのスガシュウヘイのレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
3.5
「私は母親。子どもをどう育てようと私の勝手でしょ?」

日本はまだ、この問いに対しはっきり答えられていない現状があると思う。


事件が起こるまで、誰も秋子から周平を解放することができなかった。

体目当て。金目当て。
自分の過去を周平に投影し、正義感を燃やしたり。
でも結局は
みんな「通過」していくだけだった。
誰も留まることができなかった。

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そして、本作がおもしろいのは、秋子も周平も、お互いを「好き」だと思っているところだ。
第三者には歪に見えるかもしれないが、二人は「相思相愛」だった。


秋子は周平を手放そうとしない。相談員の亜矢が周平に本を差し入れたときなどは、激しく怒った。これは周平を愛するあまりの嫉妬なのか?二人の関係に立ち入る隙を与えない。

周平も、一度だけ秋子から離れようとしたが、結局は秋子に言われるがまま、犯罪に手を染めてしまった。そして捕まってなお、秋子を庇っている。


親が子に対し、一方的に虐待をするわけではなく、双方が依存関係にあるところに本作の深みがあると思う。


長澤まさみも良かったが、奥平大兼という若い俳優の演技が特に良かった。

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保育園も小学校も児童相談所も警察も。
「親権」という最強の旗の前に、その専門性が機能しないときがある。


「子どもは母親が育てるのが一番」
という根拠不明の定説がはびこり、虐待で保護された子どもも、親元へ帰されてしまう。『万引き家族』でもそうだった。


提案なんだけど、「勤労」「納税」「教育」の三大義務をいずれも満たしていない親からは、親権を剥奪する法律があってもいいんじゃないかなぁ。
義務を果たしていない親に、そこまで気を遣う必要ないよ。
もっと介入したほうがいい。

公開:2020年
監督:大森立嗣
出演:長澤まさみ、奥平大兼、夏帆、阿部サダヲ