玉造

MOTHER マザーの玉造のレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
3.9
実話をもとにした映画。
祖父母を孫が殺害するという悲惨な事件だ。
ニュースをただ観ていると、その背景は分からない。
「なんてひどい孫だ!」と一言で終わってしまう。

働かず、男ぐせも悪く、実家に金銭をせびる母親。息子を学校に行かせず転々とする。
母親に怒鳴られても、お金を借りに行くように言われても、黙って従う息子、周平。
そして男に捨てられたり、お金に困ると泣いて息子を頼る母親、秋子。

この二人の関係は心理学でいう共依存だ。他人が入り込めない二人だけの関係。
自身の問題を相手に委ねたり、相手がいないと自分が成り立たない事をいうらしい。

実の父親は毎月養育費を払い、お金を取りに来た息子を抱きしめ、「お父さんの所に来るか?」と言うが、周平は拒否する。
母親を1人にする事が出来ないからだ。常に母親から離れない、離れる事が出来ない。
それは大きくなってからもだ。
良い悪いの分別は付いているし、秋子をたしなめる事も言うが、結局従ってしまう。
周平は勤勉で、違う父親の妹を可愛がる優しい子だ。
きっとこの母親でなければ違う人生があったはず。

どんな人間でも子供を持つと、「親」という絶大な権利を持つ。
それは子育てに向かない人間もだ。「自分は親だ!」と言われると行政もなかなか手が出せないらしい。虐待が増えてる今、早急の改革が必要だ。

長澤まさみも体当たりで演じ、荒んでいく母親役が良かった。
酷い母親なのに一人で生きていけなくて、甘える仕草は何故か愛おしい。
子役の郡司翔くん、新人の奥平大兼くんが素晴らしい。
二人共全く違和感なく同一人物を演じている。
奥平くんの「お母さんが好きで何が悪いの?」のセリフ。
虐待を受けてもなお母親を求めてしまう、嫌いになんてなれないのだ。

緒方拳の「鬼畜」という映画でも、最後は父親をかばう息子。
この映画を思い出した。

★「お母さんが僕を嫌いでも」を観た直後に観賞。
偶然か、太賀と小野花さんも出演していた。あれ?と気持ちが動くので、別々に観て下さい。
玉造

玉造