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83歳のやさしいスパイのtackyのレビュー・感想・評価

83歳のやさしいスパイ(2020年製作の映画)
4.5
最初、フィクションだと思った。
出てくるおばあちゃんたちが、とても愛くるしい。
そして、よくこの施設が、撮影を許可したものだ。

冒頭から、施設に預けた母親が、職員から虐待を受けていないか?娘が探偵社に依頼する。それを調べる目的で主人公の老人が探偵社に面接を受け、やがて潜入捜査する為に入所する。
ここまで、物語にグイグイと引っ張られていく。

全ては主人公の最後の言葉
「施設から虐待されていると心配するなら、何故面会に来ないのか。」
確かに。本末転倒である。

この施設に入っている老人達は、皆家族から入れられて、面会も滅多に来ない、完全に絶縁状態である。
その中で一人寂しく亡くなる入居者もいる。

その中で主人公だけが、家族と暮らしていて、孤独だと偽りの身分で入所するのだが、それぞれの入居者達の家族との疎遠の境遇に、憤慨するのである。

やがて探偵捜査の仕事を終えて、一人施設を後にする主人公。
ラストシーン悲しげに見送る入所者たちと、迎えにきた娘や孫達と晴れ晴れと退所する老人との対比に、とても悲しい気分になった。

いろいろな事情で、世界中どこでも、孤独になる老人達はいる。致し方ない事であっても、この「負の連鎖」は、子へ孫へと続いていくのであろうか?
特に少子化の進む日本では、深刻な問題である事を、この作品によって深く考えさせられた。
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