さく

ファーザーのさくのネタバレレビュー・内容・結末

ファーザー(2020年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

悪化していく認知症を患者目線で描く作品は初めて見た。冒頭でのアンソニーの横柄な態度や示唆された暴力的な一面(=典型的な”表面的”認知症患者描写)から、彼に対してマイナスな印象しかなかった。が、作品が進展するにつれ、彼の目に映る「何を信じて良いのか分からないようなホラーのような世界」を疑似体験し、そりゃ仕方ないよなあ、と印象がガラッと変わった。
特に、タイムループというか、青い服のアンが繰り返し出てくるたびに、早くこの日から抜け出させてくれ…と苦しくなった。

基本的にはアンソニー目線がメインで描かれていたけれど、娘アンの抱える葛藤もオリヴィアによって素晴らしく表現されていた。認知症患者が自宅で最期を迎える割合は非常に低いそうだけれど、それは当然だし、プロに任せるべきだなと本作で痛感。(…が、同時に職員による暴力が示唆される場面もあり、事実は不明だが、認知症患者相手ならありえる話かもというモヤりも)

原作である舞台では、アンソニーの症状が悪くなっていくと同時に、舞台にある家具が少しずつなくなっていき、ラストシーンでは舞台が空っぽになるそう。本作でも家具といった小道具がキーポイントとしての役割を果たしていたが、決められたショットしか見れない映画と違って、目の前にある舞台という箱が空っぽになっていくのはかなりインパクトが強いだろうな。見たい。
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