ちひろ

ファーザーのちひろのネタバレレビュー・内容・結末

ファーザー(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

戯曲を書いた方が監督だったので、演劇を想像しながら観た。父の視点で描かれてるからわたしたちも、知らない顔の女性が自分の娘だと言ってきたり、飾ってあったはずのお気に入りの絵がすっかりなくなっていたり、認知症を疑似体験している気分。ボケると馬鹿にされたり粗雑に扱われたりすりけど、本人からしたらホラー、恐怖でしかないだろうな。最後のシーンが、アンソニーの言葉がどうしたって悲しい。死って誰もが分け隔てなく向かう場所だけど、それが遠くても近くてもその恐怖は変わらない。その時優しく抱きしめてくれる人がひとりいたら良いな。それでずっと時計をずっと探していたのかもしれない。としたら辛い。人から見たらガラクタ集めてるだけかもしれないけど、本人からしたらひとつずつ理由があって。徘徊も。

葉が一枚ずつなくなっていくようだ。どこに横たわれば良いかも分からない。時計がないから去る時間もわからない。誰か迎えにきて欲しい。

認知できなくなっていることをわかっているから、それに対する策もないこと、誰もどうしようもできないこと、それでも進まなきゃいけないこと、全部恐怖だ。
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