一瞬、胸の隙間に北風が入り込んだのかと思った。全然違った。
誰も覗くことができない、ましてや触ることなんて到底できない誰かの頭の中。心の中。
人間の記憶は曖昧で、忘れてしまったり、創り上げてしまったりだってする。いくつかの曖昧さも実際に見てきた。
悲しいなんてものとは全然違う。切ないという言葉にも置き換えられない。負の気持ちのようで全く異なるこの気持ちを何と呼べばいいのか。
わたしはこの先、大切な人の心が絡まってしまった時に優しく解いて寄り添うことができるだろうか。望まれるなら何にだってなりたいと思っているこの気持ちが、どうか消えませんように。