みーちゃん

アシスタントのみーちゃんのレビュー・感想・評価

アシスタント(2019年製作の映画)
4.0
この問題を、こんな形で切り取るアイデアと、それを成立させる演出が特筆すべきだと思う。セリフや説明を排除して、誰も感情を爆発させるわけではないのに映像が訴えてくる。この手法は、どんな問題提起にも使える気がする。

87分という尺もちょうど良く、その中で、何を、どの時系列で、どんな比重で表現するかが完璧に近いバランスじゃないかな。"完璧に近い"というのは、そこに観客の受け取り方がプラスされて初めて完成する作りだから。(映画でもリアルでも)そもそも本質を見ない、感度が低いと、分からない或いは分かっても面白くないかもしれない。

この会長の行為や、形だけの社内相談窓口がブラックなのは明白なのでさておき、グレーなエピソードも的確で、例えば上司に送るメールを先輩社員に興味本位でチェックされ、自分の言葉じゃない言葉で書かされる(あれを繰り返すだけでも思考停止に陥る)。

女性管理職みたいな人にエレベーターの中で掛けられた言葉。あの人は意地悪ではなく周囲に配慮ができ、自分でもそう自認しているはず。だからよかれと声を掛けてくれたと思うが、それが全くズレていて、無意識のバイアスを体現(自分の引き出しにあるアドバイスなんかじゃなく、先ず相手の話を聴こうと肝に銘じた)。

心理的安全性がない職場での長時間労働。この疲弊感が半端ない。何が正しいかではなく、社内の雰囲気という見えないものを可視化することで、企業カルチャーの意義と重要性、そして誰もが当事者であることを再確認することができた。