みーちゃん

ボーはおそれているのみーちゃんのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.7
とても面白かった。アリ・アスター監督らしさを味わえたし、最近観た映画だと"哀れなるものたち"と対をなすような感覚も少しあった。
(途中どうしてもトイレを我慢できなかったので、出来ればまた行きたい)

どこまでが現実?非現実?という疑問はあるかもだけど、私はそこを考察する気が全く起こらない。全部リアルに、全部自然にスッと入ってきた。あんなに不思議なことが起きているのに…。今更だけど、プロットとそれを具現化する力に感服する。冒頭のセラピストとの会話から見入ってしまった。セリフの違和感が一つもない、っていうか、どの場面もセリフだと感じない。どれだけ磨き上げたのだろう。

私がヘレディタリーを好きなのは、ホラーによって毒親の呪縛を昇華したところ。本作はコメディによって、ということかな。でも対象や要素、結果は更に複雑に更新されていて、そこも良い。

船上での初恋や、家庭を持つ空想では、平穏な空気が一瞬だけ流れた。と同時に、こういう既成概念的なライフステージと、個人の真の幸福は果たして同じなのだろうか、みたいなことも考えさせられた。

最後に。全体のトーンが(必要以上に?)暗いというか鬱々というか深刻に見えるのは、ホアキン・フェニックスの影響が大きいと思う。キャスティングによって全くテイストが変わりそう。次回作の主演も彼とのことで、アリ・アスター作品との相性が良いのかは、正直ちょっと分からないな、という印象を持った。