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逃げた女のfilmoutのレビュー・感想・評価

逃げた女(2019年製作の映画)
4.0
会話中、カメラが独特なタイミングでズームする。映画の技法ではクロースアップやズームはその人物の感情をダイレクトに伝える方法として一般的に使われるけど、この作品ではそれが個人のダイレクトな感情と言うよりも彼女たちの関係性の中間に寄っているように見える。
そういう寄り引きの最中にけたたましく外界から感情を乱しに現れる男性の身勝手さにイラつくし、その後のドアロックもかなり示唆的。
友人たちにとって「5年間一度も夫と離れたことがない」と話すガミは少し異質に見られながらも、最後に偶然出会う元カノ?によって緩やかではなく一気に夫の呪縛から解けたように思える。

映画はオムニバス的に進行しながらシーケンスごとの区切りで映し出される山の向こうのカットを回収してラストシーンに持ってくる。
実際の映像には移行せずスクリーンのまま終えるところに、ガミの心境の変化と並行してスクリーンを見る事の意味まで示唆しようとするホン・サンスのしたたかさ。
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