せんきち

シネマ歌舞伎 三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たちのせんきちのレビュー・感想・評価

3.7

シネマ歌舞伎は初。歌舞伎自体も初なのだが面白い。


原作は傑作歴史ギャグロマン漫画『風雲児たち』の大黒屋光太夫編。


伊勢の漁師大黒屋光太夫一行が嵐にあいロシアへ漂着。その後、日本に戻るまで10年の苦難を描く。

井上靖の『おろしや国酔夢譚』が有名だが、原作はあくまで『風雲児たち』の一編。


10年に渡る苦闘を2時間弱でまとめるのは相当に難しく相当カットされている。原作では光太夫とキリル・ラクスマンの友情も描かれていたがラクスマン役の八嶋 智人によって完全なギャグキャラにされていたのは残念。

しかし、その分あまりに長くロシアにいたため洗礼を受けてしまい日本に戻れなくなってしまった庄蔵(市川猿之助)と新蔵(片岡愛之助)との別れに焦点をあてたのは上手かった。


その為、クライマックスの光太夫(松本幸四郎)と庄蔵、新蔵の別れは感動的なのだが原作では光太夫と庄蔵だけの別れなので新蔵が邪魔になってるのが残念。

シネマ歌舞伎を観て面白いと思った人には是非原作を読んで欲しい。井上靖の『おろしや国酔夢譚』も面白いが原作の『風雲児たち』はこの大黒屋光太夫のロシア漂流編と並行して前野良沢、杉田玄白の解体新書、平賀源内の天才、林子平、高山彦九郎(日本の右翼の元祖)、松平定信の寛政の改革、最上徳内の北方探索のエピソードが複雑に絡み合っていくのだ。原作でもこの辺の面白さは異常。

三谷幸喜自身が『風雲児たち』の大ファンなのでこの辺を大河でやりたいんだろうなとシネマ歌舞伎観ながら思ってました。
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