菩薩

アウステルリッツの菩薩のレビュー・感想・評価

アウステルリッツ(2016年製作の映画)
3.5
「面白かった」と言うのも憚れる作品だが今日観た3本の中では一番面白かったし、何よりまさかまさかの太腿映画大賞であったのは嬉しい誤算であるとか言ってる俺がおそらく一番不遜であるが、本来であればそんな風にヴァカンス気分の格好で訪れる事自体が不自然な場所であるとの批判精神が込められていると信じたい。「働けば自由になれる」と掲げられた正門の中に続々と吸い込まれていく人々、皆一様にその前で笑顔で記念撮影をするわけだが、きっと後にそれをSNSに投稿して多くのいいね!を獲得するのだろう。仕込みとしか思えないTシャツや決定的なタイミングで鳴るベートーベンの「運命」、かつては囚人で埋め尽くされていた収容所跡を埋め尽くす群衆、完全に観光地と化したかつての惨劇の場を巡る人々は、そこで行われた人類史上最悪の愚行を忘れてしまった様にも見えるが…じゃあそんな彼等を眺めている自分はどうなのだと言う話で。ここまでの開かれ方は是なのか非なのか、「平和の為の旅」のTシャツを希望と見るか皮肉と見るか、個人的には皆が真夏の軽装の中一人だけダウンジャケットを着ているお姉さんが気になってしょうがなかった…。新『夜と霧』。
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