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水を抱く女のペインのレビュー・感想・評価

水を抱く女(2020年製作の映画)
4.3
ベルリン映画祭常連監督クリスティアン・ペッツォルト新作。

この間初めて観た『あの日のように抱きしめて(2014)』もかなり素晴らしかったが、本作もかなり良い。すっかりファンになってしまった。

水の精“ウンディーネ”の神話をモチーフに現代的解釈をしているため、物語としてはかなり歪で不自然なのは確かなのだが、このファンタジー的飛躍が素晴らしく、そこに黒沢清映画的な不穏・恐怖感まで加わり、このうえない豊かさを醸し出している。終盤の視点の反転など見事でしかないし、また水辺のショットはアリ・アスターも生涯ベスト映画に選ぶ溝口健二の名作『山椒太夫』を思い出さずにいられなかった。

ヒロイン“ウンディーネ”に見事な説得力を持たせていたパウラ・ベーアは、どこかレイチェル・マクアダムス風の美女だが、私的にはベーアさんの方がより好み。クリストフ役のフランツ・ロゴフスキは、内容からジャケから邦題まで何もかも“カウリスマキ映画”だった『希望の灯り』(これも素晴らしい映画でしたが)で巨大なスーパーマーケットの在庫管理係として働いていた無口な主人公を演じていたので印象深かった。“ドイツのホアキン・フェニックス”と言われるのも納得の風貌。

P.S.
ビージーズの名曲“ステイン・アライブ”に合わせてする心臓マッサージ、ステイン・アライブ式心臓マッサージは斬新!『あの日のように抱きしめて』同様に本作もヒッチコック『めまい』がモチーフになっている。
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