アキラナウェイ

DAU. ナターシャのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

DAU. ナターシャ(2020年製作の映画)
3.7
当時のソ連に生きていなくて神様ありがとうございます。

思わず、そう祈ってしまう。

オーディション人数39.2万人
衣装4万着
欧州最大1万2,000平米のセット
主要キャスト400人
エキストラ1万人
制作年数15年
餃子1日100万個
…いや、違う!!
それは「餃子の王将」だろ!!

「ソ連全体主義」の社会を完全再現した狂気のプロジェクト 。この「DAU.ナターシャ」はその壮大な計劃のごく一部であり、ほんの始まりに過ぎない。

1952年。ソ連のとある秘密研究所。施設に併設された食堂で働くウェイトレスのナターシャはある日、研究所に滞在していたフランス人科学者と肉体関係を結ぶ。しかし、そこには当局からの厳しい監視の目が光っていた—— 。

キャスト達は当時のように再建された研究所で約2年間にわたり実際に生活したという徹底ぶり。

全裸にされ、奇妙な装置の中に閉じ込められる男達。何の研究なのかなんてさっぱり判らない。


何 な ん だ 、 

     こ れ は。

ナターシャと彼女よりも若いウェイトレスのオーリャ。口喧しく指図するナターシャに対し、疎ましく怪訝そうに振る舞うオーリャ。やがて女達の取っ組み合いのキャットファイトが始まり…。

何 な ん だ 、 

     こ れ は。

言葉の通じないフランス人科学者と惹かれ合うナターシャ。生々しく描かれる性交。えっと、これ、本当にヤっていますよね?

何 な ん だ 、 

     こ れ は。

その後、ナターシャは当局に拘束され、屈辱的な拷問を受ける羽目に。着衣を脱ぐよう指示され、性器にコニャックの瓶を入れるよう強要される。

何 な ん だ 、 

     こ れ は。

全てが規格外。
これを映画と呼ぶのか、何と呼ぶのか。
相応しい言葉が思い浮かばない。
ただ、冒頭の祈りの言葉だけが脳裏を掠める。

「全てを理解している」
「貴方の目がステキ」

泣き叫ぶでもなく、咄嗟に生きていく術を見出すナターシャの強さに驚いた。そして、ナターシャは日常に戻っていく。ソ連全体主義という名の監視の目が光る、その日常に。

数日間は、この作品の事が頭から離れなかった。決して万人には勧められない、取り扱い注意の劇薬。

はてさて。
このシリーズを観続けるべきか。
それが問題だ。