baby

セイント・フランシスのbabyのレビュー・感想・評価

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
4.2
現代映画として、公開されたことに
大きな意味のある作品だと思う。

この映画は女性として必死に生きている人たちの物語だった。その内容は赤裸々で、大胆だ。今まで映画で描かれ続けてきた男性視点での作品達には多くのマスターベーションシーン(男性の)がこれでもかというぐらい描かれた。
でも、これは日常だから映画としてリアリティを含むためにも切り取られていたのだと思う。(もちろんコメディの意味でも沢山描かれるが)それはナチュラルな現象としていつでも何の気無しにでてくるのだ。
ただ、女性は月に一回血を流すことが身体の事実として存在するのに、あまり描かれない。この作品の中ではそのことを、このぐらい当たり前にずっとあるものなんだよと、全て見せてくれる。生理用品の種類をフランシスが説明するシーンや、貸し合うシーンなどは映画的でなく、当たり前なのだ。

セイントフランシスでは、自伝的な作品として描かれるだけあって、中絶のシーンもかなり印象に残った。今までは抱え込み大きく言えなかった言葉が、映画というステレオタイプの発信で大きく言えるようになる。
中絶後のフランシスが、安堵感と少しの哀しさそして、私にとっては細胞の塊にしか感じなかったと言った時、ここまで素直に伝えることは、一つの映画作品としてあって良かったと感じた。
簡単に中絶を推奨するわけではもちろんない。 そうではなく自分自身の体のことだからこそ中絶を選択することの自由を、自らの身体ことを判断し選べる権利として存在するべきだということを伝えたい。ブリジットの言葉は不本意で子を持つという上での本音としては、あまりにリアルなものに捉えられたから。作品として、映画として存在してくれる以上、スクリーンの向こう側に救われる人たちは沢山いたと思う。

そしてフランシスの両親はレズビアンの夫婦として描かれるのだけど、この作品ではレズビアンとしてのマイノリティに対する不平等さはあまり描かれない。そうではなく、子育てをする上での悩みが赤裸々に脆く伝えられる。そうすることで、よりシンプルに悩みそのものに共感でき、皆んなが同じように悩み、存在自体は何も変わらないことを当たり前のように示していた。
今まであまり見たことのないような作品でありながら、シンプルかつ丁寧に人との交流も描かれていて、最後にはこの作品らしいブリジットとフランシス、2人の絆に涙が止まらない。観ている私は"女性"として生きていることに、また嬉しくなった。

余談ですが、私が観た上映回は予想していなかった男女比で、性別問わず沢山来場してることに、世の中まだまだ捨てたもんじゃないなと安心しました。これはすごく嬉しかったことだし、映画館で見たメリットの一つかなと。入プレが生理用品という点でもどこまでも、この作品らしさが一貫していて嬉しくなった瞬間でした。
baby

baby