藍紺

セイント・フランシスの藍紺のレビュー・感想・評価

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
4.1
先を見通して行動するタイプじゃなくて、今この瞬間が自分にとって大事、そうやって今まで生きてきた何者でもない34歳のブリジット。ハッキリ言っちゃうとクズ女なんだけど自分はとても好感が持てました。
他人から下に見られるのは嫌だけど、気を使わない恋人未満の年下男は下に見ている。互いに値踏みしたりされたりは自分も大いに心当たりがあるので痛いとこ付かれてグサグサくる。



中絶したことは同情して欲しくないし、大したことじゃない。でもだからと言って軽く扱われたくないし、現に自分の体は傷ついている。かまって欲しいわけじゃないけど、平気なわけじゃない。
傍からみたら︎︎“めんどくせぇ女”かもしれないけど、でもこういう気持ちあるあるだしめっちゃわかる。

ブリジットを取り巻く女たちもそれぞれに悩みは不安を抱えてるんだけど、自分のことよりもまず彼女のことを気遣う言葉や行動を表す場面が多々あって。主人公もその優しさに触れ、凝り固まった心がほどけて行く。しかもそれがさり気なく表現されていて監督と脚本家の手腕に見事にやられてしまいました。

生理、避妊、妊娠、中絶、子育て、母親になること、同性愛、女性性、人種の違い、家族、社会的地位……、他にもたくさんの現代社会の問題がこれでもかと盛り込まれてるにも関わらず、物語として破綻せずしかも軽やかな作品になってるのは凄いことなんじゃないかなと思いました。好きな作品です。
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