大島育宙

グリード ファストファッション帝国の真実の大島育宙のレビュー・感想・評価

4.1
超面白い。激推し。
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などの男の一代記モノに準えられることが多いだろうけど、実在人物をモデルに架空のヤバい人を作り上げた遊び心と悪趣味が素晴らしい。
主人公の死因が舞台のギリシアと相俟って神話的で寓話的で、リアリティとファンタジーの飛距離もまた意地悪。
やたらと誕生パーティーに呼ぶキャスティングリストに実在のセレブの名前を上げる辺りはストレートに下品になってしまってる気もするけど笑

他方、海辺の難民やスリランカの工員は俳優ではなく本物。『ノマドランド』などに代表される「本物キャスティング」ブームの一翼に見えて、これほど虚実を行ったり来たりしたり、虚栄を求める男の話であることも含めて強度は段違い。海辺の難民を撮影する際に「微笑んで」と演技指導するのに声を出して笑われてしまうコメディシーンが白眉。

男性サイコパス成功者のバックボーンには多くの場合、強い母親がいるという監督の視点の鋭さよ。グリードの少年時代と母との絆が歪んでいくくだりは泣かせる。