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まともじゃないのは君も一緒のRのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

映画館で。

2021年の邦画。

監督は「遊泳禁止区域」の前田弘二。

あらすじ

高校生の秋元香住(清原果耶「花束みたいな恋をした」)は外見は良いが数学一筋でコミュニケーション能力ゼロの予備校教師、大野康臣(成田凌「窮鼠はチーズの夢を見る」)は「普通」の結婚に憧れる大野に自分の憧れの存在である宮本(小泉孝太郎「七つの会議」)の婚約者美奈子(泉里香「記憶屋 あなたを忘れない」)に「練習」と称してアプローチさせる計画を思いつくが…。

毎日読んでる「シネマトゥデイ」で初めて紹介されてから、ずっと気になっていてようやく公開されたので土曜日に行ってきました!

今作、ジャンルとしてはラブコメにあたる作品だと思うんだけど、なんといっても主演2人のコンビ感が抜群に良い!!

香住を演じた清原果耶はぶっちゃけ出演作を観たのは「ちはやふる」最終章である「結」のオリジナルキャラくらいなんだけで、それまで芦田愛菜みたいな子だなぁくらいのイメージしかなかったんだけど、この子やっぱりめちゃくちゃ演技が上手い!!思春期特有の鬱屈した想いを抱えながらも、「恋愛経験ゼロ」という設定から来る、中盤からの感情制御不能状態とも言うべき慌てふためき(そして、トキメキ✨)の感じとか、こういうコメディ演技に振り切れる演技の幅の広さが凄くて、それは朝ドラに順当に出演後に来期の朝ドラ「おかえりモネ」にも抜擢され、若手女優の筆頭とも目されるわけだわ…。

そして、個人的には何と言っても予備校教師大野を演じた成田凌!!見た目はご存知の通り眉目秀麗、スーパーで買った安物のイエローのアウターすら(でも、ユーズド感があって、彼が着るといい感じの古着にしか見えない)スタイリッシュに見えちゃう絵になる男なんだけど、とにかく性格が残念っ!な男。いい感じの女の子に告白されても「それ定量的(どれくらいの量か)で(好きか)言ってもらえる?」とか聞いちゃったり、大好きな数学の話になるとオタク特有の早口&「数学は冒険だ!」とか言って恍惚しちゃったり、笑い方がとにかくキモかったり笑と…いやぁ残念だわーw

でも、それを違和感なく演じちゃうあたり、成田凌の凄みを感じる。特に「人の言ったことを聞き返しちゃう癖」の自然さ。下手な人が演じるとわざとらしさすら感じちゃいそうなところをすごく自然に演じ切っていて、やっぱ彼の演技から目が離せなくて、今作の役柄も(同じオタクとして)すごく親近感も湧くし、好きになっちゃうなぁ。

序盤のいい感じのバーでの女性2人組との会話シーンの残念さも俺もコンパで経験あるわぁ…笑。

この2人が「普通」というテーマを題材に端端から来る大野の「まともじゃなさ」を香住が的確なテンポでツッコミを入れていく会話劇がとにかく心地良くて、いいバディ感。

2人の他にも、香住の憧れの人物である子どもの知育玩具会社経営者の宮本を演じた小泉孝太郎も口八丁で、でもすぐさまわかる「軽薄さ」でペラい男具合も良かったし、あと忙しい宮本との関係性の中で不安な感情下で揺れ動く婚約者美奈子を演じた泉里香のものすっごい「色っぽさ」も堪らなかった(料亭での伏せて大野を見つめる時のエロさヤバィ…。)。

そんな感じで宮本と美奈子の仲を引き裂くために、初めは大野を利用しようとする香住なんだけど、スーツ姿でバシッとイメチェンした大野に「君が(普通になるために)必要なんだ」と言い寄られたことでコロッと好きになっちゃう展開もまた良い!!

てっきりバディのまま終わると思いきや、今度は美奈子←大野←香住の三角関係展開に移行(そして、そこに入り込んでくる宮本w)してからの香住のスナックでの取り乱しっぷりも、なんか青春してるなぁ…って感じでわかる、わかるぞー!!

大野も大野で美奈子と馬が合うのか、それまでの残念っぷりが嘘のようにいい感じになっていって、危うくキスにまで縺れ込みそうになっちゃうシーンは香住と一緒に声がでそうになった笑。で、そんないい男として覚醒しても香住に「次の計画は?」と変わらず頼っちゃうあたりやっぱ変わってるよなぁ。

そんな「まともじゃない」2人は果たして「普通」の恋愛を成就させることはできるのかってところなんだけど、今作を観ていると「普通」とは何かを考えさせられる。

美奈子やそれまでの香住のように「何かを諦める」ことが「普通」だとするならば、そんなん普通じゃなくて結構!!だと思うけど、ちゃんと自分という人間を振り返って「今変わらないと、一生変われない」と寂しげに話していた大野の内面を描くことで、今作はまともじゃないことが100%正しいと言っているわけではないあたり、そう単純な話ではない。

完全に「普通」な人間なんて多分1人もいないとは思うけど「普通」と「変」の価値観を葛藤しながらも行ったり来たりしながら、それでも成長していく2人のように、俺も4月から新年度が始まる今、毎日の中で「自分」を大切にしていきたいと感じた。

「森」で始まり「森」で終わるラストも、そして「まともじゃないのは君も一緒」というタイトルも秀逸。恋愛の甘酸っぱさとそしてほんのちょっぴりビターな味わいを残すとても愛すべき作品だと思いました。
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