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DAU. 退行のmementooreのレビュー・感想・評価

DAU. 退行(2020年製作の映画)
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しばらく思い出しては考え直す。見終わった後の感覚としては、意外にもシンプルな構図や見立てで全体が組み立てられたなということ。序盤から共産主義と宗教の重なりから始まりロシア宇宙主義的なモチーフが散りばめられる。最後もソ連崩壊を再演する形で全てがあっという間に瓦礫になっていく。
おそらく重要なことは全く画面が代わり映えしないこと。10章構成で分けられたそれぞれのパートも、たくさんの人間が入れ替わり立ち替わり登場退場を繰り返すにもかかわらず、またこれかというような反復と退屈と疲弊に襲われ続ける。刹那的な飲み会の享楽、長官室での尋問と誓約書の執筆、エロスのかけらもないセックスシーン、グラスが床に叩きつけられて破片が飛び散る、換気扇が鳴っている音。
閉塞的で全てが人間関係の網目の中にあり、そこで自分は決められたある一つの身振りしか取れない。生活の外部はどこにあるのか。死体を核融合の放射によって大気圏外に転送する、という荒唐無稽なアイデアが途中科学者の口から漏らされるが、生活の外部を求めること自体幻想なのかもしれない。恐ろしい映画だ。
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