わらびもち

マイ・ニューヨーク・ダイアリーのわらびもちのレビュー・感想・評価

4.5
私の中で米国文学といえばサリンジャーがすぐさま思い付きます。

アメリカ留学時代に授業で読んだ「ライ麦畑で捕まえて」は精読したせいかその時想像した世界が今でもまだ思い起こせるくらい脳に染みついています。
アメリカでは多分読んでない人はほとんどいなくて、この映画の中でもあるようにファンレターが溢れるほど届いて、色んな人の心にホールデンコーフィールドというキャラクターが住んでいるかのように皆強い思い入れがあるのが分かります。

物書きを目指す主人公ジョアナはサリンジャーが属する出版エージェントに就職するが、彼宛てのファンレターを読むが返事は定型分(サリンジャーは読みませんの旨)をタイプライターで打って返送して、送られてきた手紙はシュレッダーにかけるという仕事を担当する。
熱のこもった手紙をサリンジャーの代わりに読むジョアナは禁じられていると分かっていながら自分で返事を書いてしまう。
でも確かに仕事は仕事だし、感情を持ち込んでしかもサリンジャーのファンの間に入るのはダメなのは分かるけど、誰でも人間ならしちゃうんだろうな。
もちろん仕事のプロと呼ばれる人は無感情でシュレッダーにぶち込んでいるんだろうけど、それが出来ないのは仕事できないになってしまうんだろうけど、仕方ないと思った。

ジョアナの突発性や、文学によって磨かれたであろう洗練さ、自分主体で生き、感情もぶら下げながらニューヨークの街を闊歩しているのが印象的でした。
職場の上司(なんとシガニーウィーバー)とのやり取りは緊張感がありますが、次第に打ち解けていくのも良かったです。