もりゆうき

ペルシャン・レッスン 戦場の教室のもりゆうきのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

この作品は、感動作ととらえること自体が違うんじゃないだろうか?

自分のことをペルシャ人と偽ったことで、偽のペルシャ語を教えることになった主人公が、収容所の囚人の名前から造語をひたすら作っていく話。
造語とともに、囚人の名前も覚えていて、それを最後に読み上げるところに感動があるというレビューをちょこちょこ見たのだけれど。

彼が囚人に対して思い入れがあるというシーンはあっただろうか?
一部シーンを除いて無かったと思う。
ただただ彼は、自分が生きるために囚人の名前を情報として利用していた。
当然それが薄情という話ではなく、必死に生きていたということ。

最後にようやく自分の命が助かったことを知って、涙と名前がこぼれてきたというシーンで、ずんと重くのしかかれども、感動という言葉で片付くシーンか?と思ってはいる。

なんというか、記録資料のような意味合いでは良いと思ったけど、なかなか人に薦めづらいと思ったのでこの評価。

というのには、彼の人間的な心の部分が見えないのに加えてもう一つ理由がある。
ナチの描き方だ。

この映画のナチは、全くもって人種が違い、どう頑張っても会話が出来ない感じが、なんとも言えず気持ち悪かった。
ユダヤ人を作業として殺しながら、恋愛して、文化を享受して、恋敵を最前線に送る。
そして、ペルシャ語を教わる側の男も、自分は高尚であると信じて疑わない。

それほどナチス映画を見ていないけれど、良くも悪くもとても人間的で、今を生きる人間にも同じ面があると言われている感があった。
それがとても気持ち悪かった。
ナチを否定したいのだけれど、それを否定させてくれない感じ。

おそらくそれも意図して描いているように見えるので、映画として良いと思ったのだけれど、どう自分で処理していいかわからなかった。

のだけど、そこまで作り込んでるならこれ、すごい作品だな…ということで評価を上げました。
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