あしたか

望みのあしたかのレビュー・感想・評価

望み(2020年製作の映画)
4.7
息子が殺人事件に関与しているー。
殺人者としてか、被害者としてかは不明だが、状況から判断して(未発見の)被害者の生存は絶望的。
そんな時家族は「殺人犯だったとしても生きていてほしい」と願うか、「息子が死んでいたとしても潔白であってほしい」と信じるか。残った家族はそんな最悪の思考の選択を迫られる。

本作は事件の謎を追う正統派刑事サスペンスではなく、残された家族に焦点を当てた物語となっている。
息子が行方不明になり、死体が発見される。警察が動き出し、マスコミは自宅に押し寄せる。報道が加熱し、事件の真相は不明のまま憶測が飛び交い家族は嫌がらせや誹謗中傷にも苦しむこととなる。
そういった苛烈な状況下で家族の面々はどんなことを思うのか。自分たちの将来を天秤にかけ、息子(兄)が死んでいてもいいから潔白であればいいと思えるのか?

そんな最悪の質問を投げかけてくるとんでもなく深い作品になっている。家族があらゆる方面から攻められダメージを受けるさまが執拗に丁寧に描かれているので、観客も一緒に疲弊していくこと間違い無し。特に堤真一の後半のやつれ具合は相当なものである。

終始不安感や緊張感が物凄いため、終盤の真実が明らかになるくだりはただただ脱力したし、悲しかった。
最後は涙無しには見られない。自分は号泣と言ってもいいくらいに泣いた。色んな映画を見てきた中でもトップレベルに泣いた。
名作です。
あしたか

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