娘が、万引きの疑いをかけられた挙句、追い掛けてきたスーパーの店長を振り切ろうと、道に飛び出し、車にはねられ、亡くなる。
娘は無実だとスーパーの店長に詰め寄る父。いじめがあったのではないか？学校に詰め寄る父。スーパーの店長が、娘に何かしようとしたんじゃないか？と、疑う父。獣が狂って吼えてるかのように荒れ狂い、周囲の人々の話に聞く耳を一切持たない、父。
娘の汚名を晴らしたい行動に一見見えるが、この荒れ狂ってる父の時の古田新太が見ているのは、「自分の」娘である娘であり、感情がある「人間としての」娘では無い。
自分の殻に閉じこもり、怒りのままに突っ走る父であるが、徐々に周りの人との関わりや、苦言を通して、果たして、自分は、本当の娘を知っていたのか…？と、思い至り、そこから初めて娘に向き合い始める。
そこに至る大きいきっかけとなったのが、娘をはねた車を運転していた女性の母の真摯な謝罪であり、娘の否を認めながらも、その存在が自分にとってどれだけ愛しい存在であったかを切々と語る加害者の母親の姿に、我が身を振り返る父。
それ以降、娘の趣味をなぞってみたり、好きだった漫画を読んでみたり…。
そして、徐々に娘の気持ちに寄り添っていく。
この父を演じる古田新太もとんでもなく素晴らしいのだが、他の役者さん達、全員上手く、特に、寺島しのぶ演じるスーパーのパートの草加の行動がこの話の核の暗喩のようで、素晴らしい。
彼女は、一見、社会的に正しいようでいて、でも正しいって何よ？と思わせる、うざさ。
しかし、一見良いことをしているので、もやっとしても誰も何も言えない。
そんなはっきり正しいと正しくないにわけられへんやろ！と、反発をいだき、同時にこの話に全体がそうなんやな。と、気づく。
罪は罪として、それは勿論罰せられるべきだが、関係の無い事まで詳らかにされ、それを自分は正義だとばかりに情報操作して垂れ流すマスコミと、目で見たものだけを信じ、自分は正しいと疑わず、加害者に嫌がらせをする世間。
しかし、そんな中、寄り添ってくれる人も必ずおり、人間の清と濁が、繰り返し描かれている様が圧巻。
しかし、車で新太の娘をはねてしまった女性の片岡礼子さんの独白には、久々に嗚咽が漏れた。個人的にはあのシーンが一番胸にくるシーンだった。
