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空白のyaekoのネタバレレビュー・内容・結末

空白(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます


覚悟してたけれど、とても重くて苦しくて、息がしづらかった。

出て来る人ひとりひとりが、悲しさとか憤りとか後悔だったり、罪悪感だったり、あるいは責任感とか正義感とか使命感とか、そういったものを象徴しているように思えた。

でも、みんながひとつだけの感情を抱えているのではもちろんなくて、いろんな感情がごちゃごちゃになって、または理性と感情を行ったり来たりして、苛まれていて、けれど忘れたくないなと思ったのは、孤独感。
『空白』という、とても深く響くこの言葉は、映画の中のいろんなところに引っかかるけれど、わたしがいちばん初めに引っかかったのは、事故に遭った彼女にだった。
彼女の空白を、考えた。

特に感情って、目に見えない上に、人によって形とか距離感とか違うから、ややこしいし厄介で、それがまた事態を複雑なものにしてしまう。

でも起こったことだけを見れば、とてつもない悲劇で、残酷で、痛ましくて、
そこに関わった人たちが、交わって、突き詰められて、悲劇の波紋が拡がっていくのが、怖くて悲しくて辛かった。

それでも添田が娘の死を悼むように絵を描いたり、そうやって少しずつ彼女の空白に寄り添うようになったのは、きっとその中で交わった人たちの影響なのだと思う。

ひどい嵐という言い方すら生半可で優しいけれど、遭遇して、容赦ない暴風雨に晒されて、なのに通り過ぎれば移り変わって、時間の中に流れていく。
虚しくて、腹立たしくて、悲しい。

傷ついて、失って、ぼろぼろになって、それでも生きていかなければならないのならば、どうか添田や青柳のように、癒やされることがその先にあると信じたい。時間が癒したり、あるいは思いがけないところから救われたり。そう、祈りたい。
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