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アイヌモシリのogaのネタバレレビュー・内容・結末

アイヌモシリ(2020年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

道民としては是非観ておかなければと思い公開を心待ちにしていた本作。
今日が初日だったのですが、決して広くない地元のミニシアターが満席になっていたところからも注目度の高さが伺えました。

で、内容。
徹頭徹尾アイヌ側の視点で話が進んでいく非常に内省的な作りになっていて
それだけに阿寒で暮らすアイヌ達の伝統と現代の価値観との間での葛藤や消えゆく文化への思いなどがひしひしと伝わってきました。
実際彼らの普段の言葉はバリバリの北海道弁で、アイヌ語で行う儀式の際には台本が必要。
(歌はきちんと残っているようだったけど)
文化が現れる場はお土産や地元のイベント。
廃れる伝統をやむなしとする人もいる。
でもそんな中でも現代文化と自分たちの伝統を上手く共存させようと試行錯誤している人もいる。
翻って主人公を筆頭とした子供達は時に反発し、でも時に文化を重んじながら生きていく。
そんな葛藤の集大成があのイヨマンテであり
現代の目線ではつい否定的に見てしまいがちなあの熊殺しの儀式も
そういう背景を考えると簡単にその是非を述べられるものではなく…

最初、本作を見てちょっとだけ「サーミの血」を思い出したりもしたのですが
あちらはサーミとスウェーデンの間の分断や差別意識というテーマが大きかった一方で
こちらはそういう対立構造はあまりなく、ただひたすら内省的。
そこが一番良かったところかも知れません。

とにかく、非常に考えさせられるという点では観て良かったです。
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