さうすぽー

青くて痛くて脆いのさうすぽーのレビュー・感想・評価

青くて痛くて脆い(2020年製作の映画)
3.9
自己満足点 77点

痛い、想像以上に痛い(笑)

「君の膵臓を食べたい」の住野よる原作の青春映画。
キミスイのような王道純愛ではなく、「何者」のような拗らせて痛くなった男子を主人公にした青春映画で、個人的にキミスイは好きになれなかったのですが、これは好きでした。
賛否分かれそうな作品ですが、それでも自分は良い映画だと思っています。

二人でいたときの話は、主人公にとって青くて輝いてる時代だったのに対し、数年後の主人公は少し暗いトーンでミステリアスな復讐劇として進行していきます。

最初は杉咲花演じるヒロインがいなくなり、二人で立ち上げた団体モアイが大きくなり、主人公の言う理想から遠ざかった事でモアイをぶち壊す話としてストーリーが進行しますが、途中から映画の視点が変わり、ちょっとしたどんでん返し的な要素があったのも面白いです。

叙述ミステリーで言うところの信頼出来ない語り手のような要素を日本の映画で観るのは新鮮ですね。

吉沢亮演じる主人公は想像以上に"痛い奴"で、自分は基本的にこういった奴は嫌いなタイプなのですが、こいつは不思議と嫌いになれなかったです。
確かに吉沢亮のやったことは相当に"痛い"ですが、自分にも少し理解出来る所もあったりと、色々と考えさせられました。

主人公を演じた吉沢亮は相変わらず上手いですね。
彼は本当にイケメンだと思うのですが、同時にイケメン度を消せる俳優だとも思います。
この主人公はモテなそうなキャラで、普通の二枚目俳優だと浮きそうですが、吉沢亮は普段のイケメンのオーラを見事に消せていて、見事に役にはまっていました。

こういったひねくれたストーリーでありながら、ラストも決して突き放すような展開にさせずにしっくり来て尚且つ心暖まるような展開で終わる辺り、満足度は高いです。


あえて好きじゃない部分を上げるとしたら、
映画の演出が時折ドラマっぽくて映画に合わない演出が目立ちました。
特に、最初の大学の講義の場面で杉咲花が映る時に窓の光が明る過ぎて顔が少し隠れてしまってる辺り、人物に対する光の当て方が下手でした。
何度も言ってますが、映画は本来暗い映画館で観るものなので、テレビドラマくらい明るいと過剰過ぎてチープに感じてしまうので止めてほしいです。

また、杉咲花に関しても思うところがあります。
人から"痛い"と思われる言動を言いつつ、自分の夢に真っ直ぐ向き合う性格ですが、彼女が全く違う授業にも関わらず先生に対して「世界平和」の質問をする意図があまり理解できませんでした。
そりゃ"痛い"と思われるよ(^_^;)


気になる所はありつつ、
思ったよりも全然感動出来た映画で、観て良かったし、小説も読みたくなりました。
確かに、主人公はヤバい奴だし好き嫌いは分かれそうで男女のデートにはあまり向かなそうな内容ですが、自分はこのひねくれてるけど実は真っ直ぐな青春要素が良かったです。


余談ですが、
映画の宣伝ポスター凄く綺麗ですよね!
青春の美しさと、それを覆うように青く透明に映されてる吉沢亮の不穏さを映した素晴らしいショット!
個人的にポスターの秀逸さは今年ベスト1位です!