dita

街の灯のditaのレビュー・感想・評価

街の灯(1931年製作の映画)
4.5
@塚口サンサン劇場  

拝啓チャップリン様
87年経った今も強者と弱者の隔たりは大きく、生き辛い世の中です。それでもあなたが愛した映画という娯楽はわたしの心に灯をともし、あなたが描いた人間讃歌に劇場のみんなで大いに笑い、大いに泣きました。ありがとう。ありがとう。

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話自体は無償の愛の物語とは思わなくて、むしろ皮肉と残酷さが際立つ話だと思う。それでも観終わった後は人の心根を信じてみようと思う不思議な映画。大好き。

ラストのあの表情ももちろん好きやけど、花売りの彼女に家賃と治療費を渡して去っていくチャップリンの表情が凄くて、ドアを閉めて出ていく前のあの一瞬で男のプライドと狡さ、恋する切なさ、別れの苦しさ、全部が詰まっていた。

サイレント映画ならではの想像力が映画を豊かにするんだなぁと改めて思う。人間の想像力って娯楽における最大の強みなんじゃなかろうか。

小説『波の上のキネマ』に塚口サンサン劇場が協力している関係で今回の上映が叶ったんやけど、小説の主人公とチャップリンが演じる主人公を重ねつつ、この小説に出てくる労働者たちも今日のわたしたちのようにこの映画を観て同じシーンで笑って同じシーンで泣いたのかなとか思いながら観たせいもあって、ことばに表せない色んな感情が溢れて最初からずっとうるうるしてた。
場内も最初は静かやったけどだんだんみんなが映画に引き込まれていくのがわかって、どんどんみんなが我慢できずに声出して笑って、めちゃくちゃ幸せな空間やった。映画という娯楽がわたしたちに与える希望こそ、街の映画館にともる灯なのかもしれない。
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