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劇場版 きのう何食べた?のYuiのレビュー・感想・評価

劇場版 きのう何食べた?(2021年製作の映画)
4.2
料理好きで几帳面な弁護士の史朗。陽気で大らかな美容師の賢二。幸せな毎日を送っていた2人は、史朗の提案で、賢二の誕生日に京都旅行へ行くことに。しかし、それがきっかけで彼らの平和な日常に変化が訪れる…。

この二人が笑い合っているのを観ているだけで、多幸感に包まれて、幸せのため息が止まらない。この気持ちはなんだろう?と自分でも思うほど、とにかく幸せそうな二人を観ているだけで幸せで、一瞬で気持ちがいっぱいになる。

ドラマの劇場版って、日本人が日本人の為に作った商業目的のドラマ延長を映画館で上映する…って感じで、映画ではないと思っているし、もっと「映画」を映画館で上映してくれよ~と思っていたけど、これはこれでいいのかもしれないなと思わせてくれた作品でもあった。別にドラマでも映画でも、幸せになる人がいる訳だし、集客しないと映画館も映画ももっと衰退してしまうもんね。

本作は原作ありきだけど、下手な事しないでドラマの延長で良かった~!と思いました。

ドラマでもそうだったけど、パートナーや周りの人への気遣い、言葉遣い、心遣いが本当に素敵。「言葉で伝える」という事の大切さを毎回賢二が教えてくれるし、史郎さんには「思慮深い判断」の根底は思いやりなんだと毎度襟を正す気持ちにさせてもらえる。そして二人の素直さは本当に魅力的で素晴らしいので見習いたい部分です。

小日向さんとジルベールもずっと見ていたい素敵なカップルだし、とにかく全ての登場人物が愛らしくてほっこりする。ずっとこのほっこりに包まれていたくなる。それぞれに見習いたい部分がたくさんあるな~。

「きのう何食べた?」というタイトルが改めて秀逸だな~とも感じた。観終わった後、このタイトル、この言葉に詰まっている色んな愛の凝縮が心に広がってくる。

笑って泣けるとっても素敵な作品でした👏
またドラマ観返したくなりますね😌✨




それと共に、クランクアップを迎えた内野聖陽の「男に戻る」というインタビューがどれだけの人の気持ちをぐちゃぐちゃにしてしまったかという事も、色々考えさせられた。私は劇場版を観てから、インタビューを検索して読みましたがやっぱり心がぐちゃっとなった。その発言以外にも引っかかる部分が何ヶ所かあったし…。

悪気はないのかもしれない。役者としてのアプローチは私には分からないものなのかもしれない。でも、勉強不足は明らか。そして、そのインタビューをまんま載せてしまったスタッフや関係者も同じく。まだまだ私も勉強不足ですが、これがまだ日本の現実なんだと突き付けられて、悲しくて涙が出た。

私たちはまだまだ「男」「女」「その他」というカテゴリーで人を分けている。今まで"普通"とされてきたその価値観が、今は偏見であるという事に気付いて、マジョリティ側が変わっていかなければ傷付く人はいなくならない。

人種差別で言うと、白人特権というのは私にとってどこか他人事で、頭で理解して分かる様なものだった。でも、性自認や性的指向に置き換えると良く分かる。

私は「女」である。
産まれてからずっと、それを自分にも他人にも否定された事はないし、女である事で社会や生活で困惑したり、傷付いたりした事はなかった。(細かく言えばあるけど今は別の話)当たり前のように性別欄は女性に〇を付け、誰かとする恋愛の話はお互いになんの疑問も持たずに異性の話である前提で、誰かに私は女であり男が好きだなんて話す必要性もなかった。女性として仕事に就けたし、病院でも女性として診察を受ける。公共トイレも当たり前に女子トイレを使い、怪訝な顔をされた事は一度もない。生きやすい性別で、生きやすい事にも気付かずに生きてこられた。そういうひとつひとつが特権だったと今は分かる。

私は「SOGI」において「シスジェンダー女性」で「ヘテロセクシュアル」である。
それはなんですか?と思う人がまだまだたくさんいると思う。

「SOGI」
性的指向と性自認がどのような状態であるかを表す言葉

「シスジェンダー女性」
生まれたときの体が女性として診断され、自身も女性だと思っている人

「ヘテロセクシュアル」
異性を好きになり、性的な欲求も持つ性的指向


これが私。
「LGBTQ」とは違い、「SOGI」は私たちひとりひとりの事であり、人権なんです。


他人の事は分からなくてもいいから、自分がどこに属しているのかだけでも知って欲しいなと思う。他人の事はその人にしか分からない。その人が家族や友達や好きになった相手で、知りたいなら知ればいい事。でも言いたくない人もいる事も頭に置かなければならないし、他人のSOGIを決めつける事もしてはいけないと思う。

ただ、今までの「男」「女」「その他」のカテゴリーから「SOGI」にアップデートし、自分自身を知る事で、自分の中の価値観が変わり他人への想像力を持てるようになると思うし、そうなれば、無意識に誰かを傷付ける事は減るんじゃないかな。LGBTQの人達の事ではなく、自分の事として考えられるようにもなると思う。

責めるつもりはないし、私もまだまだアップデート途中なので、正解かどうかは分からないけれど、内野聖陽さんが「男に戻る」ではなく「シスヘテロに戻る」「異性が好きな男に戻る」(シスヘテロだとしたら)とかだったらまた全然違ったかもしれないですね。


でも、内野聖陽さん演じる賢二はチャーミングで優しくて大好きです!むしろ賢二推しです!この作品も大好きです!

まだ色々追い付いていないけど、まだまだ色々変われると、変えていかなければと思わされました。




2022-193
Yui

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