ミシンそば

旅路のミシンそばのレビュー・感想・評価

旅路(1958年製作の映画)
4.4
10年以上前、今よりはるかに精神を病んでた時期にオールタイムベストに入ってたことがある作品。
邦題の「旅路」って…ないわぁ。「避難所」の方がまだ納得できるくらい酷い邦題。

海岸沿いの町の、夏場には繁盛するけど冬場には世捨て人やワケあり達の溜まり場になるホテルを舞台にした群像劇、いや、こう言うべきか?

「グランドホテル方式劇」

観る人によって、話の軸が定まっていないようにも見えなくはない感じだが、主演勢は自分のステロタイプイメージを打ち砕こうと苦心している面白い様も見れる。
結果、それが功を奏し、紳士イメージがあるニーヴンは孤独で人嫌いなのに虚言壁があり寂しがりと言う面倒くさいキャラを演じてオスカーを獲り、気丈な女性のイメージがあるカーも、三十路過ぎで未だに母親の言いなりの気弱なキャラでオスカーノミネート。
(母親のキャラ、昨今SNSに溢れかえっている独善的なカスによく似ている)。
ヘイワースのファム・ファタールイメージ逆用は、この作品に限らないか(オフュルスの「永遠のガビー」をちょっと思い出した)。

そんな感じの演技合戦の他、「人嫌いで人恋しい」、そんな面倒くさい人格を一貫して肯定されているように感じられる作品なので、今より病んでた自分が心奪われるのは仕方ないことだろう。
誰かにとっての生涯ベストには成り得ない作品ではあると思うけど、「なんかいいな。」って思える人は、年を重ねるごとに増えてくるとも思う。
私刑が蔓延る昨今では絶対に作れない映画でもあるけど。