このレビューはネタバレを含みます
真面目かよ!
ニコケイで「慟哭のリベンジ・スリラー」だよ。「俺のブタを返せ」だよ。痛快バカバカB級アクションを期待して当然だろうよ。
ラストはラスボスを血祭りに上げた後、小豚を小脇に抱えたニコケイが夕陽か炎をバックにスローで立ち去るのがセオリーだろうよ。
しかも、コックをナメてたら元特殊工作員だったんじゃなくて、反社か殺し屋かとビビってたら実は料理人って、逆セガールかよ。
って、これ、あくまで配給会社と観客との間のモヤモヤであって、作品自体はちゃんとしてるんだよ。映画的にも水準高くて、静かに味わい深い佳作。
あくまで配給会社の手口にまんまと乗せられた観客側の自業自得。完敗だ、誉めてやる。
この作品の本質は、非暴力を貫くことで暴力に満ちた世界と戦う話であり、己を貫くことで偽善と虚飾に満ちた社会に抵抗する物語。
天狗になっている人気シェフを人生哲学でやり込め、料理の腕でラスボスを改心させる。絵的にはちっとも盛り上がらないが、ずっしりと胸に響いて腹に堪える。
いわば、マーベルを始めとするスーパーヒーローものへのアンチテーゼ。料理という特殊能力で平和的に戦うのが、この作品の主人公。
悪かったよ、ペヤング食うつもりでジャージ羽織って起きて来たら、コース料理を出されたもんだから。